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2015年12月

本年、最後の診療日の最後の患者様は、敬愛する横浜の某吉野敏明先生からご紹介いただいたインプラント患者様でした。

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本年、最後の診療日の最後の患者様は、敬愛する横浜の某吉野敏明先生からメインテナンス目的でご紹介いただいたインプラント患者様の上部冠脱離ケースでした。

 

 

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インプラント周囲軟組織に炎症は全く見られず、とてもきれいな歯肉です。当院はメインテナンスを引き継いだだけで、前医であらせられる吉野先生の下で素晴らしい管理がなされていたからこその結果です。

 

 

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インプラント周囲のボーンロスはなく、健全な状態に管理されています。

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清掃性の良い補綴物を作成した後、歯科医と歯科衛生士が一例一例真心こめてケアをすると、患者様によい結果がついてくるということでしょう。明るい気持ちで来年を迎えられるエピソードです。吉野先生、誠にありがとうございます!

 

 

今日は西田 亙先生の学術講演会に参加しました。

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 12月19日(土)、高松市歯科医師会の第3回学術講演会の講師として、歯科の強力サポーターとして今話題の糖尿病内科医 西田 亙先生がご登壇されると聞き、喜び勇んで駆けつけました。タイトルは「未病発症から国民を守る歯科医療~糖尿病から早期低体重児出産まで~」です。

 内容はとても素晴らしいものでした。歯周病患者数8000万人、糖尿病患者数2000万人、この数字に対して歯周病学会も糖尿病学会もこれらの疾患を治せていないことに対して先ずは謙虚に国民に詫びなければならない、というインパクトのある内容から始まる講演会は、歯科界にとっても私個人にとっても極めて示唆に富むものでした。

 私はかねてから歯科が現在以上に発展するためのいくつかの方法の中で、医科歯科連携が一つのキーワードだと思ってきました。そして、現時点で、歯周病と糖尿病が相互に影響を与え合うという事実にはエヴィデンスレベルの強い下支えがあり、医科と歯科が協力し合える良い局面と認識していました。しかし、私個人としては、そのことはアイデアにとどまり、実践に至っていなかった面があります。しかし、本日の熱い講演を聞かせていただき、これから積極的に歯科医師の立場から糖尿病医療に貢献したいと思いました。西田 亙先生のように、もしかしたら一般の歯科医師以上にペリオに詳しいかもしれない医師が存在するように、一般の医師以上に糖尿病に詳しい歯科医師がいてもいいかもしれない。だから、明日から猛烈に糖尿病に関する勉強をしたいと思います。

 それ以外にも、いくつもの印象深いヒントを頂いたように思います。それは、医療者は言葉の使い方には敏感でなければいけないとおっしゃったこと。それは、言い換えれば医療者はメッセージを発信する立場にあるのだ、ということをおっしゃっておられると思います。私も同感です。人の心に入っていくには確かに適切な言語が必要と思います。言語に鈍感ではいい医師や歯科医師にはなれないと思います。

 また、本気で語るとそれが人に伝わることも強く印象付けられました。”僕は生まれ変わったら歯科衛生士になりたい!”という発言は単なるリップサービスではなさそうですし、なぜ西田先生が歯科の力を高く評価していただけるのか、その理由が分かりました。内科医師としても、個人としても口腔ケアの威力を体験を通して実感して来られたからなのですね。自身の体験をベースに本気で語ると、その訴えが随分力を持つことがよく分かりました。

 その他、医療講演会ではありましたが、一種の自己啓発セミナーや経営セミナーとしても通用するヒントになる内容が随所に盛り込まれており、歯科衛生士さんが聞いても、歯科医師が聞いても、いろいろな面でためになる話が満載の講演会でありました。凄く参加できてよかったです。

 

 

 

 

 

 

インプラントの好ましい活かされ方 ~症例3~

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重度歯周炎の患者様においては、咬合崩壊(咬み合わせが壊れている状態)が高頻度で認められます。したがって、重度歯周炎の治療においては、咬合再構成(壊れた咬み合わせを再び作り上げること)を伴う全顎的治療を成功させることが重大なテーマです。

右写真は、重度歯周炎の患者様の初診時の状態です。

 

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下顎の咬合面観です。両側の下顎臼歯は欠損しており、一応、部分義歯を他院で作製しておられましたが、安定せず、うまく咬めないとのことで当院にお見えになりました。

 

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下顎義歯が咬めない原因として、対合の右上顎臼歯の垂れ下がりをそのままにして義歯を作成したために正常の形態の人工歯をならべるスペースがなくなり、咬合面が真っ平らで高さのない人工歯が使われていたこと、そして咬合平面がゆがんでいるために左右のバランスの取れた安定した咬み力を義歯に伝えられないことが考えられました。

 

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6本の下顎前歯は重度の歯周病になっており、歯根は歯槽骨の支持がほとんどありません。歯周病菌の感染に加えて、不安定で動く義歯による歯の揺さぶりや、咬めない義歯を代償して前歯で咬むことで過剰な負荷が前歯にかかり骨吸収の進行を加速させたと考えられます。ポーセレンメタルボンド冠でスプリント(連結固定)されていたので動揺はあまり目立ちませんでしたが、もしも一本一本を切り離せばぐらぐらになっていたでしょう。

このような状態の歯に,留め金を介して負荷をかける部分義歯の維持を担わせたくなかったので、歯周治療をしっかり行った後、欠損部の補綴治療としてインプラントを選択しました。

 

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右写真は治療後の状態です。咬合平面のゆがみを是正するため、上顎の歯列も正しく整える必要があり、歯周治療後、上顎天然歯にはセラミック冠を装着しました。

 

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歯周治療を終え、下顎臼歯部の欠損の補綴はインプラントで支持するセラミックブリッジとしました。

 

 

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両側下顎臼歯部の欠損に対しインプラントをそれぞれ2本、右下犬歯は歯肉縁下の深い虫歯のために抜歯になったのでそこにもインプラントを投入して、計5本のインプラントで下顎歯列のアーチを復元しました。

 

 

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治療後の下顎前歯のデンタルX線像ですが、初診時吸収の進行が著しかった歯根周囲の歯槽骨はある程度骨量が増えて回復し、かつ安定しています。歯周ポケットの深さも正常に回復しています。

歯周基本治療後、特別に歯周外科処置は行いませんでしたが、臼歯部にかかる大きな咬合力をインプラントに担わせることで、前歯が義歯の維持から解放され、本来の役割を果たすことだけにその役割が軽減されたことが骨量の回復につながった考えられます。

インプラント周囲炎、並びに咬合を配慮して慎重な管理を行えば、インプラントは重度歯周炎の咬合再構成に有用であると思われます。

 

 

インプラントの好ましい活かされ方 ~症例2~

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すべての歯列をインプラントで作り上げるのは歯科医にとっては魅力的かもしれませんが、患者様にとってはどうでしょう?おそらくはいささかハードルが高いのではないでしょうか?私はインプラントが最も活かされる局面は、おそらく天然歯と共存するケースではないかと思います。右のパノラマX線写真の歯列の中には、すでに失われていたり、今後残すことが不可能な歯が何本か含まれています。

 

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右上顎の臼歯部には、保険のフルメタルブリッジが装着されていましたが、よくあることなのですが、歯頚部の不適合に起因する磨き残しから、歯頚部カリエス(虫歯)ができていました。この歯頚部カリエスはかぶせ物の裏側の歯質を侵しますが、根尖側に著しく浸食している歯は抜歯となります。

 

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反対側の左上顎の歯の状態も同様で、歯頚部カリエスが見られました。天然歯はとても貴重なもので、できるだけ抜きたくないのですが、どうしても保存が困難な時はやむなく抜かざるを得ない、しかし残りの歯はこれ以上削ったり、かぶせ物を入れたりして痛めつけたくない、こういう時こそインプラントが活かされると思います。

 

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右のパノラマX線写真は治療後ですが、7本の歯はインプラントに置き換わりましたが、天然歯もまだまだ残っています。抜きたくないが、どうしても抜かないといけない時、インプラントで失った歯を代償するけれども、残りの歯はできる限り本来の寿命を全うさせたい、そのような願いを込めてインプラントは使われるべきものと思うのです。この場合、インプラントの役割は残存する天然歯の救済です。

 

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インプラントは垂直的な咬合力を支える能力が高いため、残存する天然歯が受ける咬合力の荷重を免荷出来ます。よって、救済の役割を果たせるわけです。

 
 
 
 
 
 
 

 

 

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インプラントの好ましい使われ方とは、残存する天然歯を少しでも長く持たせることに貢献する形で歯列内に登場するような使われ方だと思っています。

 

 

インプラントの好ましい活かされ方 ~症例1~

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初診時の状態。前歯3本が外傷で失われたケースです。

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このようなケースでは、ブリッジ作製のためにさらに欠損の両サイドの2本の歯を削るのはもったいない話です。それで、初診時は右写真のような部分義歯を使用していらっしゃいました。しかし、部分義歯は不安定ですし、審美的ではありません。

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治療後。欠損部に2本のインプラントを植立し、それを支台としてブリッジを作製しました。

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インプラントは天然歯を削らないで欠損部を修復出来ます。貴重な天然歯を守ることが出来たという意味で、本症例ではインプラントが有効に活かされています。

全顎のインプラント治療   

 

 

 

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毎回、自分で着脱しないといけない総義歯を嫌う患者さまには、固定性ブリッジが可能な全顎インプラント治療が喜ばれます。右写真は、状態が悪く保存が困難な上顎のすべての歯を抜歯後、インプラントで支持するブリッジを作製して咬合を再構成したケースです。  

 
 
 
 
 
 
 

2015121017569.jpg初診時、両側の奥歯は喪失しており、奥歯でものが咬めない状態でした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2015121018321.jpg右写真は治療後の状態です。上顎の状態の良くない歯はすべて取り除き、インプラントで支持するハイブリッドセラミックブリッジで歯列を作り上げました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
20151210182342.jpg今回のブリッジはインプラントに対して、ねじ止め固定されています。インプラントに対する上部構造の固定方法は、一般にセメント固定とねじ止め固定の二つの方法があり、それぞれに良い面がありますが、容易に着脱できるのはねじ止め固定です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2015121018304.jpg今回のような全顎歯列をワンピースのブリッジで制作する場合には、インプラント周囲粘膜の手入れや、万一ブリッジが破損した際の修理が容易なので、ねじ止め式が良いと考えています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
20151210185155.jpgこのような大がかりなインプラント補綴は、治療期間が長くなり、費用も高くなりますが、どうしても義歯を受け入れたくない方には大きな福音となります。総義歯よりもしっかり咬めますし、何よりも精神的に、自分はまだまだ老けていないと思いこめるところに大きな価値があると思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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