AMPキナーゼと老化

 昨日書いたように、骨格筋内のエネルギー、すなわちATPが不足するとAMPキナーゼ(AMPK)が活性化され、GLUT4の転写及び翻訳をともに亢進し、その結果、インスリン刺激によるグルコースの取り込みを上昇させる。さて、このこAMPキナーゼは、低グルコースや低酸素状態、虚血、あるいは熱ショックなど、細胞のATPを枯渇させるようなストレスに応答して活性化される。また、数々の研究から、アディポネクチン (Adiponectin)、レプチン (Leptin)、及びカルモジュリンキナーゼキナーゼβ (CaMKKβ) を介したシグナル伝達もまた、AMPKの活性化にとって重要であることが示されている。

 AMPKはまた、脂肪酸酸化や解糖系のような分解系を刺激してATP産生を増加させる。さらに、AMPKは、グリコーゲン合成酵素などの細胞内のATP消費に関連する数々のタンパク質をマイナスに調節することでATPの消費を制限している。その結果、糖新生、及びグリコーゲン、脂質及びタンパク質の生合成を低下させたり阻害したりする働きもする。脂質とグルコース両方の代謝に中心的な調節因子としての役割を果たすため、AMPKは肥満やII型糖尿病、そしてがんの治療にとって鍵となる標的であると考えられているのだ。興味深いことに、AMPKは、今日、mTOR、SirT1(サーチュイン)及びセストリンとの相互作用を通じて、老化の決定的な調節因子としても認識されている。

 その活性化により、骨格筋細胞内へのグルコース取り込みに関与するAMPキナーゼは、老化の調節にも関連しているらしい情報もあり、要注目の酵素だろう。当面、自分的には、筋肉を鍛錬することで、この酵素にしっかり活躍してもらいたいものだ。

 

参考文献:Jorgensen SB1, Rose AJ. How is AMPK activity regulated in skeletal muscles during exercise? Front Biosci. 2008 May 1;13:5589-604.