光殺菌歯周治療4 ~続 活性酸素~

再び活性酸素の話です。多くの疾患の発生原因に活性酸素がかかわっていると考えられているため、なぜ活性酸素がそのような働きをするのかということを理解するには、活性酸素が他の原子や分子とどうかかわる性質を持っているのかの理解が必要です。

人が生きて行くうえで酸素は欠かせませんが、それは主にミトコンドリアに存在する電位伝達系でATPという形で、生きて行くのに必要なエネルギーを作り出すところに直接かかわっているからです。この電子伝達系で酸素は4電子を受け取って(=還元されて)水となりますが、必ずしも酸素分子に電子が4個きちんと渡されるとは限りません。酸素分子が4個ではなく、1個、2個、3個と不完全に渡される(=還元される)ことがあり、この状態だと不安定なのでさらにを受け取ろうとするのです。この状態の酸素が活性酸素です。言葉を変えると、酸素分子が部分的に還元された(部分的に電子を受け取った)ものが活性酸素といえます。

 

たとえば、酸素分子が1電子還元されると(電子を受け取ると)スーパーオキシド(・O2)となります。これは不対電子(・)を持った「フリーラジカル」に属し、スーパーオキシドアニオンラジカルと呼ばれることもあります。

 

 

さらにスーパーオキシドがもう一個電子還元されるとO22ですが、これにH+が2個つくと過酸化水素(H2O2)となります。

さらにこの過酸化水素がさらにもう一個電子を受け取る(=還元される)ともはや酸素原子と酸素原子の間の結合は安定した状態でいることができなくなり、結合が切れて、ヒドロキシラジカル(・OH)と水酸化物イオン(OH)となります。

これらスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルはすべて活性酸素の一種です。そして、スーパーオキシドとヒドロキシラジカルは不対電子をもつためにフリーラジカルです。また、ヒドロキシラジカルは活性酸素の中でも最強にラディカル(過激)で反応性が高いです。

ついでに、「一重項酸素」というものがあり、これも活性酸素の一種ですのでこの機会に説明します。一重項酸素は酸素原子同士が不対電子を二つずつ出し合って共有しています。普通ならこの状態で安定なのですが、酸素分子に限っては極めてユニークなのですが、この状態は実は通常の不対電子を二個持つ酸素分子(三重項酸素)の状態より不安定なのです。だから一重項酸素は通常の酸素より活性が高いので活性酸素に分類されます。

 

光殺菌歯周治療 3  ~フリーラジカル~

フリーラジカルと活性酸素は同じような意味合いで解釈されやすいですが、本来、定義上、両者は全く別物です。よって、ここで両者の定義を明らかにしておきます。

フリーラジカルは、「対をなさない電子(不対電子)を持つ原子や分子」と定義されます。不対電子はペアになりたがるので、フリーラジカルは一般には不安定で、反応性が高い状態です。ここのところを少し説明すると、電子は電子殻の中を周回しているのですが(電子殻は内側から外側に向かって、K殻・L殻・M殻・N殻・・・と順番に名前が決められ、電子は必ずK殻から入って行きます。)、さらに、それぞれ一番外側の電子殻には、電子が2個ずつ入る「小軌道」があって、各小軌道での電子収容数の和がその電子殻での収容数となるのですが、その小軌道に電子が2個揃うと安定する性質があります。そして1個しかない場合は不安定な状態で、この状態がフリーラジカルです。そして、前述したように不対電子はもう一個の電子を求めてペアを作りたがります。その電子を手に入れる方法が他の物質と反応することなのです。

たとえば、酸素を例にとって説明します。酸素は周期律では第Ⅵ族に属し、原子番号は8です。したがって電子の数も8個持っています。電子軌道の内側のK殻に2個、外側のL殻に6個の電子がぐるぐる超高速で回っています。この酸素を電子式で表すと、電子式は最外殻の電子をドット(・)表記する約束になっているので、酸素の電子式は図のように表現されます。外側の6個の電子のうち4個(黒丸)は電子対をなしていますが(2個の電子が対をなした状態を電子対といいます)、残りの2個(赤丸)は1個づつの対をなさない電子(不対電子とよびます)です。したがって酸素原子や酸素分子はフリーラジカルです。酸素が多くの物質と反応しやすいのはフリーラジカルだからです。

酸素と多くの物質との反応は酸化反応とよばれ、最も身近な化学反応です。たとえば、紙や木が燃えるのは炭化水素が酸素と反応し、二酸化炭素と水へと変化する酸化反応です。発生するエネルギーが大量なので、燃焼という形で発光と発熱を伴います。
金属が錆びるのは、金属が酸素と結びついて酸化物を生成する酸化反応です。錆は鉄が酸化して生成した酸化鉄(III)(赤褐色)で、銅が酸化すると、赤褐色の酸化銅(I)や黒色の酸化銅(II)になります。
食物を室温で放置すると徐々に色や味が変わってくるのも、酸化が原因です。このため、食品には種々の酸化防止剤が用いられることになります。
また、摂取した食物が体内でエネルギーに変わるのも酸化反応であり、この酸化反応のために必要な酸素を体内に取り込み、生成物である二酸化炭素を放出しています。

このように酸素はきわめて反応性が高いユニークな物質ですが、フリーラジカルゆえの性状といえます。

一方、活性酸素とは、以前説明したように、酸素分子が電子を受け取ることでエネルギーが付与され励起された状態となり、「酸素よりも反応性の高まった分子のグループ」と定義されます。本来、「フリーラジカル」と「活性酸素」とは定義上、別物ですが、実際には活性酸素の一部のものはフリーラジカルであり、フリーラジカルの一部のものは活性酸素です。つまり、活性酸素には4種(スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素)がありますが、このうち、「スーパーオキシド」と「ヒドロキシラジカル」の2つはフリーラジカルです。ちょっとややこしいですが、図示するとわかりやすいです。
(次回へ続く)

 

光殺菌歯周治療 2 ~活性酸素とは~

本日は活性酸素の話をします。

「活性酸素」という言葉はよく聞きますが、いったい何なのでしょう?
よく聞くのは、「活性酸素は老化をもたらす」とか、「がんになる原因は活性酸素が体の細胞や大切な分子を障害するから」とか、体にとって良くないものの代名詞のような使われ方です。しかし、実際には活性酸素は細菌やウイルスを酸化分解してくれたり、臭いや汚れも酸化分解してくれたりして、除菌や漂白剤などとして生活面で良いこともしています。空気清浄機などの脱臭や抗菌効果も活性酸素を利用しているといわれています。だから「活性酸素」にはよい面もあるのです。

じつは酸素は、息をすれば一部のもの(約2%)は必ず体の中で活性酸素となります。そして「活性酸素」とは特定の物質の名前ではなく、大気中に含まれる「酸素がより反応性の高い化合物に変化した物質群の総称」になります。酸素は私たちが生きていくうえで欠かせない空気中にあるものですが、もともと反応性が高く、色々な物質と化学反応することが知られています。この酸素がいろいろな物質と反応することでさらに他の物質と反応しやすくなった(活性化された)状態になるので、この状態を広い意味での「活性酸素」と呼びます。

したがって、活性酸素には色々な物質がふくまれるのですが、その中でも以下の4つの物質を狭義の「活性酸素」と呼んでいます。
• スーパーオキシド
• ヒドロキシルラジカル
• 過酸化水素
• 一重項酸素
このうち、「スーパーオキシド」と「ヒドロキシラジカル」の2つはフリーラジカルと呼ばれ、活性酸素のなかでも活性が高いものですが、とりわけ「ヒドロキシラジカル」は活性酸素の中でも最も活性が高いとされています。

前述したように活性酸素には良い面も悪い面もあります。酸素は室温で酸化反応を起こすので、栄養分を燃焼させてエネルギーを取り出す大事な役割で使われます(ミトコンドリア内で)。その際、活性酸素が必然的に発生します。その他にも、抗菌作用があるので免疫系にも欠かせません。白血球やマクロファージが細菌やウイルスをやっつけることができるのは活性酸素を利用しているからです。
だから活性酸素は生きていく上で、なくてはならないものなのです。しかし、同時に、活性酸素は反応性が高すぎて、細胞内の物質と反応して正常な体の細胞を損傷させてしまうことがあります。これが、癌や生活習慣病の原因になったり、老化を促進させる原因にもつながります。その他、活性酸素は多くの疾患の発生原因にかかわっていることが分かっています。だから、活性酸素は「もろ刃の剣」ですね。
 (次回へ続く)

光殺菌歯周治療 1 ~古くて新しい治療~

今日の話題は、最近、当院で力をいれている“光殺菌”歯周治療です。これは“光殺菌”と呼ばれる療法を歯周治療に応用したもので、歯周病菌に感染した歯周組織に光を照射して、歯周病菌をやっつける治療法です。

この“光殺菌”の部分は、一般的には「光線力学療法」(フォトダイナミックセラピーPDT:Photodynamic Therapy)と呼ばれている治療法を用いることを意味します。以下、光線力学療法について概説します。

「光線力学療法」(PDT)とは、光に反応する特定の物質に光を照射し、引き起される光化学反応によって産生される活性酸素により、標的とする細胞を殺滅する治療法です。そして、標的細胞が細菌であれば感染症の治療に、標的細胞が腫瘍であれば癌の治療に用いられます。

「光線力学療法」(PDT)の歴史は古く、1900年にRaabという学生が水槽の中で飼っていたゾウリムシを無害とみなされていたアクリンオレンジという色素で染色したところ、致死的効果を認めたことに端を発するとされています。彼はこの現象が太陽光線が窓から差し込まれていた時に起こることに気づきました。そして、この現象は染色色素、光、酸素が関与していると洞察した指導教官Tappeinerが、この現象を“Photodynamic action”と命名しました。これが光線力学療法(PDT;PhotodynamicTherapy)(以下PDTと称す)の最初の発見です。

PDTは当初、光が細菌を殺すことに着目して感染症治療への応用が研究されていました。1901年にNiels Finsenは天然痘や皮膚結核の治療に光を用い、1903年には光線療法に関する業績でノーベル賞を受賞しました。しかしながら、1910年にペニシリンが発見されて以来、感染症治療においては抗生物質が主役となり、細菌に対する光線力学療法は忘れられていきました。

一方、1924年にPolicardらによってポルフィリンという光感受性物質が腫瘍に特異的に取り込まれ蛍光を発することが報告されて以来、PDTは主に医科領域で、癌治療の分野で発展してきました。

そして、わが国の医科におけるPDTの臨床応用は、1994年の厚生省の認可、1996年の保険収載を経て、現在では、呼吸器科では肺癌、軌道狭窄を伴う進行性癌、消化器科においては早期食道癌、早期胃癌、婦人科においては子宮頸部初期病変、脳神経外科においては脳腫瘍、眼科においては加齢黄斑変性症、皮膚科においては皮膚癌、血液内科においては白血病、悪性リンパ腫に対して行われており、医科においてPDTは一般化しています。

しかしながら、近年、抗生物質耐性株(MRSAなど)の出現により、感染症に対する
抗生物質以外の治療法が模索されるなかで、古くて新しいPDTに対する関心が感染症治療の分野で再び脚光を浴びて来ました。そして、癌に対するPDTと区別するため、細菌などの殺菌を目指して使用するPDTを、Antimicrobial-PDT(a-PDT;抗菌光線力学療法) という名称が用いられるようになりました。
 (次回へ続く)

歯科用金属をめぐる不都合な真実 12 ~保険に導入されたCAD/CAM冠はレジンブロックからつくられる~

以上、述べてきたように歯科用金属には金属アレルギーを起こすリスクがあることから、非金属の歯冠修復材料の登場が待たれる状況でした。しかし、最近まで非金属で強度が期待できるものはセラミックのみでした。そのセラミックですら、ジルコニアセラミックが登場するまでは、強度の不十分な長石系セラミック(ポーセレン)に金属の裏打ちをして強度を保証することでなんとか咬合圧に耐えうるフルクラウンとして臨床に使用されていました。

このセラミックは現在でも保険診療外の治療ですが、最近、金属以外である程度まで咬合圧に耐えうるフルクラウンの材料が保険診療に登場してきました。それがCAD/CAM冠と呼ばれるものです。本来、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manifacturing )とは、一般的にはコンピューターでデザインし、コンピューターで製作される製品のことを意味しますが、歯科でいうCAD/CAMとは、口腔内スキャナーで光学的に読み取ったプレパレーションされた歯のデジタル印象をもとに、コンピューターでプレパレーションされた歯に適合するように歯冠をデザインし、コンピューターで制御されたミリングマシーン(削り出し機)を用いてブロックから歯を造形するシステムのことをいいます。そして、このようなシステムで歯を作るテクノロジーが歯科技工の主流となっている現在、保険にもこの技術が導入され、それをCAD/CAM冠と呼んでいます。

2014年、CAD/CAM冠は保険導入されました。ただし、その素材はレジンです。つまり硬いプラスチックです。当然、強度は不十分なので適用は小臼歯部のみに限られていました。2016年になると、医科で金属アレルギーの存在が認定された場合に限って大臼歯にもCAD/CAM冠が保険適応されるようになりました。その後、現在までに20種類以上のレジンブロックが保険適応材料として承認され、メーカーによってはすでに第三世代、第四世代のブロックへ発展しています。

そして、現在のところ、CAD/CAM冠の保険適応は、小臼歯部では単冠症例、大臼歯部では上下第二大臼歯まで残存し、左右の咬合支持がある患者に対し過度な咬合圧が加わらない第一大臼歯の単冠症例に限られています。つまり、CAD/CAM冠製作用のレジンブロックは強度がないので、連結冠やブリッジ(強度が必要とされる構造物)には使えないのです。

以上より、現時点では、非金属で強度のある修復材料を選ぶとしたら、セラミック以外にないということになります。

歯科用金属をめぐる不都合な真実 11 ~金属を外すと一時的に症状が悪化することがある~

また、なかには金属を除去した後、症状が一時的に急激に悪化することがあります。これはなぜでしょう。実は、この現象が起こると、その除去した金属が決定的に原因であるという証拠が固まると考えられて重視されています。つまり、この現象は、金属除去時に大量の金属切削片を飲み込ませたり、気道にまき散らすことで体内に入れていることによるのです。

Fregertは、金属アレルギーを起こす原因金属を経口摂取させると掌蹠の水疱や全身の皮疹が出現することを報告しています。つまり、金属除去という行為は、金属の経口摂食試験と同じ意味合いがあります。金属除去後の急激な症状悪化は、長期の経過観察結果を待たずして、その除去金属が犯人である可能性が極めて高いことを示しているというわけです。

したがって、被疑金属除去後の一過性の症状悪化は、非常に重要な現象として扱われています。
(次回に続く)

歯科用金属をめぐる不都合な真実 10 ~金属アレルギーの治療~

パッチテストで、ある金属に対して(たとえばパラジウムやニッケルなど)陽性反応が出たら、その被疑原因金属を除去して様子を見ることになります。口の中に入っている金属の除去は歯科の仕事ですので、医科と歯科との密接な連携が必要です。

原因と思われる金属を除いて例えば2ヶ月程度の短期間で皮膚症状が改善することもありますが、中には10ヶ月あるいはそれ以上待ってから症状も改善が見られるケースもあります。そして、症状が改善したことを確認後、非金属の修復材料で歯の充填や被服をすればよいのです。

ところで金属を除去して以降、症状が改善するまで金属を取り除いた穴はどんな材料でで詰めておいたらよいのでしょうか?答えは、接着性レジンセメントやアイオノマーセメントで仮の詰め物をしたり、レジンと呼ばれるプラスティックでテンポラリークラウン(仮の被せもの)を入れます。ただし、レジンに対してもアレルギーが起こることもあるので、あくまでも仮の材料として様子を見ます。経過観察の間に問題が起こらなければ、最終修復処置として、小さな穴を埋める程度の充填であればそのままレジンが充填材料となります。また、大きな欠損や被せものの場合は強度が必要ですので、セラミックで修復されることになります。レジンでもアレルギーが起こるようであればセラミックで歯の欠損を充填することになります。セラミック自体にはアレルギーは起こりません。ただし、セラミックを歯に接着するセメントに対してアレルギーを起こす可能性はあります。
(次回に続く)

歯科用金属をめぐる不都合な真実 9 ~金属アレルギーの診断~ 

原因不明の皮膚症状が出現し、金属アレルギーが原因かも?と疑われた場合はどうしたらいいのでしょう。
歯科金属アレルギーは全身性接触皮膚炎であるので、まず専門医を受診することが基本であり、重要です。皮膚科医での治療が未治療の場合、まず皮膚科を紹介します。

専門医の問診により、接触皮膚炎が疑われた場合は、まず最初にアレルゲンを特定する検査が行われます。これはパッチテストという方法で皮膚科で行われます。パッチテストとは、原因が疑われる物質を皮膚に少量貼り付ける検査で、もし皮膚炎が起こればその物質がアレルギー性接触皮膚炎を起こす原因物質であると判断する方法です。
また、リンパ球幼若化試験(LST)というものもあります。これは、リンパ球が抗原刺激を受けると幼若化し、核酸の取り込みが活発になる現象を利用するもので、患者のリンパ球を体外に取り出し、試験管内でそのリンパ球に金属イオンを加えてリンパ球を刺激し、その後チミジン(H3thymidin)(核酸の一種)の取り込み量を調べてその幼若化の程度でその金属がアレルギーの原因であるかどうかを判断する方法です。

(参考)
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018 日皮会誌:128(12),2431-2502,2018
接触皮膚炎診療のガイドライン  アレルギー 61(2)175-180.2012
(次回へ続く)

歯科用金属をめぐる不都合な真実 8 ~金属アレルギーの発症メカニズム~ 

話を歯科金属アレルギーに戻しましょう。歯科金属アレルギー発症機序の全貌は解明されていないのですが,基礎研究の積み重ねにより,その一部が少しずつ見え始めてきているのが現状です。全身性接触皮膚炎の発症機序は大体のところは以下のようなものです。
1. 詳細は不明ながら、何らかの理由で口腔内の金属が溶け出しイオン化する(ガルバニー反応、細菌学的腐食、擦過腐食、応力腐食などが考えられています)。
2. 金属イオンは不完全抗原(抗体を産生させる能力を欠く抗原をいい、ハプテンと呼ばれます。蛋白と結合することで抗体産生能力を獲得します)の状態だが、口腔粘膜や消化管から吸収され、キャリア蛋白と結合し、抗原化する。
3. 完全に抗原化した金属は血行に乗り、リンパ節に取り込まれる。ここで抗原提示細胞によりTリンパ球は感作誘導される。
4. 金属抗原は血行に乗り全身に運ばれ、発汗により皮膚表面に移動する。
5. 表皮のランゲルハンス細胞が金属細胞を感作Tリンパ球へ抗原提示することで、遅延型アレルギーとして皮膚炎を発症させる(湿疹、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、掌膿疱症など)。
6. また、局所の接触皮膚炎の発症機序として、ネックレスなどの金属抗原が皮膚の抗原提示細胞やマクロファージに取り込まれ、Tリンパ球を刺激する。金属抗原に感作されたTリンパ球が活性化されサイトカインを多く分泌することで金属が接触する局所の皮膚炎が発症する。

まとめますと、歯科金属アレルギーは、口腔局所の金属が溶け出して口腔粘膜や消化管から吸収され、血行性に全身に運ばれ、さらに到達した部位でと発汗などを介して皮膚表面に移動し炎症反応を引き起こす「全身性接触皮膚炎」と捉えることができます。
(次回へ続く)

歯科用金属をめぐる不都合な真実 7 ~金属アレルギーの症状 2~

前回、原因の一つに金属アレルギーが考えられている掌蹠膿疱症の症状を紹介しましたが、一般には金属アレルギーとはどのような症状がどこに現れるのでしょう?
金属アレルギーは、金属が接触する局所粘膜や皮膚に症状が発現する「アレルギー性接触皮膚炎」と、全身の皮膚に症状が発現する「全身性接触皮膚炎」の二つのタイプがあります。そして、後者の方が圧倒的に発現頻度が高いことは覚えておいていいでしょう。
口腔局所の症状としては、最も多いのが扁平苔癬様の粘膜面(赤い部分と網目状の白い部分が混合した状態)(写真参照)で、さらに粘膜や舌の疼痛と発赤, 口唇の荒れや腫脹が比較的多くみられます。全身に表れる症状としては,湿疹、水疱、かゆみ、皮膚の紅斑の発生率が高いです。

ここで接触皮膚炎について言及しておきましょう。接触皮膚炎とは、簡単に言えば、外からのなんらかの原因物質が皮膚に接触することで赤みやブツブツ、水ぶくれが出現する疾患です。そして強いかゆみやヒリヒリ感、痛みをともなうこともあります。
接触皮膚炎の原因は大きく分けると「一次刺激性」と「アレルギー性」の2つに分けられます。まず一次刺激性接触皮膚炎は化学物質との接触や摩擦などで起こります。たとえば、シャンプーなどの洗剤に含まれる界面活性剤がありますし、便や尿も摩擦を伴って接触皮膚炎としてのオムツかぶれを起こします。また、食べ物も原因物質となり得、山芋や里芋、アロエやパイナップル、キウイフルーツ、桃などを食べた時に口のまわりにかゆみをともなう赤みが生じることがあります。

一方、アレルギー性接触皮膚炎は、原因物質に繰り返し接触したり、特定の物質でアレルギー反応が引き起こされたりして生じます。どちらの皮膚炎も、多くみられるのは化粧品や外用薬など皮膚に触れる日用品です。
それ以外では、金属がアレルギー反応を起こしやすい物質としてよく知られています。金属アレルギーの原因となるものとして代表的なのは、歯科用金属以外ではネックレスなどのアクセサリーや腕時計、硬貨、ベルトのバックルなどです。
(次回へ続く)