インプラント周囲炎について

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インプラント周囲炎は,現在のインプラント治療が直面する最大の問題です.歯周病が原因で歯を失った人に対して行ったインプラントの方が,歯周病以外の原因でインプラント治療になった場合よりも,その発症頻度がはるかに高いことが知られています.その直接原因は,天然歯同様,歯周病菌がインプラント周囲歯肉に感染することですが,間接原因としては,喫煙習慣や糖尿病が代表的なものです.それ以外の局所的原因としては,最低2ミリの角化歯肉幅の欠落や,GBR(骨誘導再生法)が完全に成功していないこと,などがあげられます.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25622536

 

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いずれにしても,歯周病で歯を失った後にインプラント治療を行う場合は,それに先だって,しっかりした歯周治療を先行して行うべきであることがコンセンサスとして確立しています.

 

治療の方法と考え方

インプラント治療とは

失ってしまった自分の歯の代わりに、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を作成して咬み合わせを回復させる治療法です。
固定性であるためガタついたりせず、自分の歯のように咬めるようになります。

インプラントポリシー

あらゆる難症例に対応

インプラントは義歯やブリッジよりも高い咀嚼回復能を有しているので、当院では、天然歯を欠損した部位の補綴方法の第一選択はインプラントです。インプラントの適応がある限り、あらゆる欠損補綴症例に対して、インプラントで咀嚼機能を回復する治療法を目指します。
ところが、インプラントを埋入しにくい難症例もあります。歯周病で歯を失った部位では、多くの場合、歯槽骨が水平的、垂直的に溶けていることが多く、こういった場合は、通常ではインプラント治療の難症例になります。
インプラントは顎骨の中に埋め込まれるものである以上、インプラント周囲に支持骨が十分にあることが必要だからです。

しかし、当院はあらゆる難症例に対して、可能性のある限り、インプラント治療を試みます。
たとえ支持骨が不十分な部位でも、骨造成することで支持骨が増量し、インプラント植立が可能となります。
これは骨を造成する高度な先進テクニックを使用することで可能ですが、この方面の技術革新がインプラント治療の適応を大きく拡大し、国民の幸福に寄与出来ると確信しています。当院はインプラントを支持するのに不十分な顎堤を、十分な顎堤に変えることに情熱を傾けています。

高機能インプラント

当院で使用するインプラントは、世界のトップメーカーの高機能インプラントです。
インプラントの生命線は骨といかに強固に結合するかにかかっていますが、現在の一流メーカーのインプラント表面性状はチタン表面にブラスト(コンプレッサーエアーで研磨剤を吹き付ける)処理した後、酸エッチング処理を施してあるので、短期間で骨と結合し、いったん結合するとそれが長く安定する高機能が保証されています。
しかし、どの業界でもそうですが、類似品が存在し、形は一流メーカーに似せてはいるものの、表面性状は一流メーカーのそれよりも遥かに劣るものも出回っています。そういった商品は廉価ですが、大切な口の中に入れる人工臓器ですから、安ければいいという訳にはいきません。
長く安定して機能する一流メーカーのインプラントは決して廉価ではありませんが、それだけのものを投資する価値が口腔にはあると思うからこそ、当院は一流メーカーのインプラントを使用するのです。

精密技工

インプラント上部構造には、高い精度の適合性が要求されます。
不適合による特定の部位への応力集中が、インプラントコンポーネンツの破折や、インプラント周囲骨の吸収を招く恐れがあるからです。オッセオインテグレーション(骨とインプラントが完全に一体化された状態)が得られたインプラントは歯根膜を持たないため、天然歯の場合には多少の期待ができる歯根膜の緩衝作用が基本的にないため、天然歯補綴よりも高い精度が要求されるのです。
分かりやすくいうと、補綴物の適合が多少悪くても、天然歯の場合は若干歯が移動するので、強く押し込めばなんとか補綴物を歯に被せる事が出来ますが、インプラントの場合は骨と一体化されている状態なのでインプラントの移動はなく、不適合な上部冠を無理矢理インプラントに押し込めば必ず補綴物やそれを支持するインプラントコンポーネンツにひずみが生じ、それがインプラントコンポーネンツの破折や周囲支持骨の吸収を招くのです。

ゆえに、インプラント技工は天然歯の技工よりもはるかに高い精度が要求されます。
したがって、インプラントに関わる技工士は、不適合が患者にもたらす不利益の重大さを正確に認識し、精密技工への熱い情熱と深い造詣高い技術力を併せ持つマスターである必要があります。

当院のインプラント技工を担当して頂いているラボは、徳島県鳴門市にある我が国屈指の特殊精密技工専門ラボである“アトリエココロ”です。
前述の基準を完璧に満たしており、当院の信頼出来るパートナーとして緊密な連携を保っています。

長期メインテナンス

いったんインプラントを装着した後、それを長期に良好な状態で維持するポイントはメンテナンスにあります。
インプラントの上部にのせる構造物は患者自身で清掃しやすいような形態を付与しますが、それでも長い間には少しずつ汚れがたまり、それを放置すると、汚れの中の細菌の作用により、次第にインプラント周囲の骨が溶けていくことになります。
これは天然歯が歯周病になるのと同じ状態で、最後にはインプラントは脱落します。
このような事態を避けるためには、歯科衛生士によるメインテナンスを長期にわたって受けて頂く必要があります。
当院のインプラント治療を受けられる患者さんは、全員がメインテナンスを受けて頂く事になります。

 

治療の順序とシステム

治療の順序

診査と治療計画 インプラント治療に必要な診査を行いインプラントの治療が可能かどうかを診断してもらいます。
その後治療計画を立てます。

フィクスチャー
埋入の手術

歯の根に相当する部分のインプラントの部品(=フィクスチャー)を手術により顎の骨に埋入する手術を行います。
局所麻酔を用いて行いますので安心して手術を受けることができます。
治癒期間 この後、骨とインプラントがしっかり結合されるまでの治癒期間を設けます。(3~6ヶ月)
*治癒期間は骨の質などにより個人差があります。
*この間、必要に応じて仮の歯を入れることもあります。
アバットメントの
連結
人工の歯の支台となるインプラントの部品(=アバットメント)をフィクスチャーに連結します。
*この時、簡単な手術を行う場合もあります。
人工歯の装着 インプラントを含めたお口の中全体の印象採得(=型をとること)を行います。
その型に従い人工歯を作成します。
その後、アバットメントの上に人工歯を装着して完成です。
メンテナンス インプラント治療の終了後、インプラントを長持ちさせるためには、適切なホームケアと定期的な検診が不可欠です。先生の指導に従い正しい歯みがきをこころがけてください。
また、半年後に一度、定期検診を受けインプラントの状態を先生に診てもらうようにしてください。

*アストラテックインプラントのパンフレットより引用

当院で採用しているインプラントシステム

アストラテックインプラント

アストラテックインプラント

アストラテックインプラントは世界的な製薬、医療器具メーカーであるアストラゼネカ社のグループ企業、アストラテック社により開発された生体親和性に優れ、長期間安定して使用出来る素材である純チタンを用いた歯科用インプラントです。1985年から開発に取り組み、現在その研究開発力と長期安定性は世界中で高い評価を受けています。

ザイーブ

ザイーブインプラントは世界的メーカーであるFRIADENT社により開発された最新のインプラントです。
FRIADENT社は顎顔面インプラントの世界的メーカーで国際的に高い評価を受け、高品質の製品を現在世界38カ国に供給しています。
つねに変動する歯科市場のニーズに敏感に適応し、インプラント製造業の中でも世界トップ5の一つとして展開を繰り広げています。
ザイーブインプラントの開発はフリアリット、更にはテュービンゲン大学(ドイツ)のProf.Dr.W.Schulteらを中心に1974年から開発された「FRIALITテュービンゲンインプラント」まで遡ることができます。ザイーブインプラントは、これまで治療が困難であった無歯顎や骨吸収の進んだ顎堤に対する「機能修復」のための適応だけでなく、「審美修復」の概念で開発されたインプラントシステムです。

アンキロス

同じくFRIADENT社より発売されているインプラントです。
1985年Prof.G.H.Nentwig(フランクフルト大学)とDr.W.Moser(工学博士・チューリッヒ大学)らにより、インプラント周囲の骨吸収を抑え、長期的な成功を収めることを目的に開発されました。接合部をフィクスチャー直径よりも内側に設定するというコンセプトは、1987年以来20年の臨床研究およびその結果により、骨吸収を防ぐために有効であることが証明されています。そしてこのコンセプトはどのサイズのフィクスチャーとアバットメントの組合せでも実現することができます。

ストローマン

スイスにあるインプラントメーカーです。非営利の国際的な学術研究グループであるITI(International Team for Inplantology)と長年にわたって良好なパートナーシップを築いており、ITIの臨床・科学的データはストローマン製品に反映されています。SLAはストローマン社が開発したインプラント表面形状で、インプラントの歴史を塗り替えた革新的技術です。豊富な文献によってその高い信頼性が裏付けられています。

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上記四社の使い分けについて

国内、外のインプラントメーカーが提供する各インプラントシステムにはそれぞれ特徴がありますが、当院では、世界の一流ブランドであること、長期安定性に定評があること、骨幅や軟組織に多少の不足があっても埋入可能であることインプラント頸部の骨吸収がほとんど起こらず審美領域の使用に耐えること、というポリシーを満たすインプラントシステムを採用しています。


  • 前歯部や審美性が厳しく要求される部位にインプラントを埋入する場合は、
    platform switching タイプであるアストラテックやアンキロスを使用しています。

     
  • 特に骨幅や軟組織が不足している場合、アンキロスを使用します。
     
  • 審美性が要求されない臼歯部に対しては、上記四者はいずれも使用可能ですが、なかでもSLAサーフェスを有するストローマンを信頼しています。
     
  • 上顎洞底までの距離が短い上顎臼歯部ではテーパーを有するアストラテック、ストローマンが最適と考えています。