歯科用金属をめぐる不都合な真実 8 ~金属アレルギーの発症メカニズム~ 

話を歯科金属アレルギーに戻しましょう。歯科金属アレルギー発症機序の全貌は解明されていないのですが,基礎研究の積み重ねにより,その一部が少しずつ見え始めてきているのが現状です。全身性接触皮膚炎の発症機序は大体のところは以下のようなものです。
1. 詳細は不明ながら、何らかの理由で口腔内の金属が溶け出しイオン化する(ガルバニー反応、細菌学的腐食、擦過腐食、応力腐食などが考えられています)。
2. 金属イオンは不完全抗原(抗体を産生させる能力を欠く抗原をいい、ハプテンと呼ばれます。蛋白と結合することで抗体産生能力を獲得します)の状態だが、口腔粘膜や消化管から吸収され、キャリア蛋白と結合し、抗原化する。
3. 完全に抗原化した金属は血行に乗り、リンパ節に取り込まれる。ここで抗原提示細胞によりTリンパ球は感作誘導される。
4. 金属抗原は血行に乗り全身に運ばれ、発汗により皮膚表面に移動する。
5. 表皮のランゲルハンス細胞が金属細胞を感作Tリンパ球へ抗原提示することで、遅延型アレルギーとして皮膚炎を発症させる(湿疹、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、掌膿疱症など)。
6. また、局所の接触皮膚炎の発症機序として、ネックレスなどの金属抗原が皮膚の抗原提示細胞やマクロファージに取り込まれ、Tリンパ球を刺激する。金属抗原に感作されたTリンパ球が活性化されサイトカインを多く分泌することで金属が接触する局所の皮膚炎が発症する。

まとめますと、歯科金属アレルギーは、口腔局所の金属が溶け出して口腔粘膜や消化管から吸収され、血行性に全身に運ばれ、さらに到達した部位でと発汗などを介して皮膚表面に移動し炎症反応を引き起こす「全身性接触皮膚炎」と捉えることができます。
(次回へ続く)