歯科用金属をめぐる不都合な真実 12 ~保険に導入されたCAD/CAM冠はレジンブロックからつくられる~

以上、述べてきたように歯科用金属には金属アレルギーを起こすリスクがあることから、非金属の歯冠修復材料の登場が待たれる状況でした。しかし、最近まで非金属で強度が期待できるものはセラミックのみでした。そのセラミックですら、ジルコニアセラミックが登場するまでは、強度の不十分な長石系セラミック(ポーセレン)に金属の裏打ちをして強度を保証することでなんとか咬合圧に耐えうるフルクラウンとして臨床に使用されていました。

このセラミックは現在でも保険診療外の治療ですが、最近、金属以外である程度まで咬合圧に耐えうるフルクラウンの材料が保険診療に登場してきました。それがCAD/CAM冠と呼ばれるものです。本来、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manifacturing )とは、一般的にはコンピューターでデザインし、コンピューターで製作される製品のことを意味しますが、歯科でいうCAD/CAMとは、口腔内スキャナーで光学的に読み取ったプレパレーションされた歯のデジタル印象をもとに、コンピューターでプレパレーションされた歯に適合するように歯冠をデザインし、コンピューターで制御されたミリングマシーン(削り出し機)を用いてブロックから歯を造形するシステムのことをいいます。そして、このようなシステムで歯を作るテクノロジーが歯科技工の主流となっている現在、保険にもこの技術が導入され、それをCAD/CAM冠と呼んでいます。

2014年、CAD/CAM冠は保険導入されました。ただし、その素材はレジンです。つまり硬いプラスチックです。当然、強度は不十分なので適用は小臼歯部のみに限られていました。2016年になると、医科で金属アレルギーの存在が認定された場合に限って大臼歯にもCAD/CAM冠が保険適応されるようになりました。その後、現在までに20種類以上のレジンブロックが保険適応材料として承認され、メーカーによってはすでに第三世代、第四世代のブロックへ発展しています。

そして、現在のところ、CAD/CAM冠の保険適応は、小臼歯部では単冠症例、大臼歯部では上下第二大臼歯まで残存し、左右の咬合支持がある患者に対し過度な咬合圧が加わらない第一大臼歯の単冠症例に限られています。つまり、CAD/CAM冠製作用のレジンブロックは強度がないので、連結冠やブリッジ(強度が必要とされる構造物)には使えないのです。

以上より、現時点では、非金属で強度のある修復材料を選ぶとしたら、セラミック以外にないということになります。