レーザーの歯周・インプラント周囲組織への効果

 今日のテーマもレーザーだ。今日、レーザーは多くの種類があるが、歯科用レーザーとしては、エルビウム・ヤグ(Er:YAG)レーザー、Co2レーザー、Nd:YAGレーザー、半導体レーザーが主だ。ところで、インプラント表面は細かい溝がきられており、さらにその溝を構成する表面も小さな凸凹の面からできているので、機械的には清掃しにくい。汚染されたインプラント表面をデブライドメントしたい時には、非金属のチップの超音波スケーラーや、エアーアブレイジョン(パウダーの吹き付け)、あるいはチタンワイヤブラシでこする、といったものが現在行われている機械的清掃法だが、はたして本当に表面の微細な窪みにこびりついた汚れが取れているのか不安に思う。したがって、汚染されたインプラント表面の清掃ツールとして、光さえ到達できれば殺菌効果が期待できるレーザーは有望だろう。

 インプラントに対するレーザー照射に求められる条件として、1)チタン表面が物理的に変化しない 2)熱障害が少ない 3)周囲組織(特に骨組織)に熱障害を与えない、等である。上述の歯科用レーザーのうち、以上の条件を満たすものは、エルビウム・ヤグ(Er:YAG)レーザー、Co2レーザーだ。 Nd:YAGレーザーや半導体レーザーは禁忌。Er:YAGやCo2レーザーは水への吸収性が高く、照射部位のごく表層でのみ作用するため、生体に及ぼす熱副射作用が少なく、歯周病やインプラント治療に安全に使用できる。また、汚染されたインプラント表面に照射した場合、適正な出力レベルで使用する限り、照射範囲がごくわずかであるために過度の温度上昇は起こらず、安全に使用できる。

 インプラントへの具体的効果として、根面の歯石の蒸散効果、殺菌効果、歯肉の蒸散効果、骨面のデブライドメント効果、インプラント表面のデブライドメント効果などがあげられる。

 CO2レーザーの使用経験からいうと、使用方法が簡単なところが気に行っている。なにせ、光を当てさえすればよいのだから。そして、光が一直線なのもよい。なにせ、自分も一直線な人間なもんで。

参考文献:和泉雄一,吉野敏明.インプラント周囲炎を治療する. 医学情報社, 東京, 2010