オーラルフレイル

 「オーラルフレイル」というタームが最近、よく聞かれる。これは、東京大学高齢社会総合研究機構 准教授であり、内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員である飯島勝也氏が、提唱した言葉だ。超高齢化社会を迎えて、地域包括ケアシステムの構築と同時に、このタームを作り出すことによって、社会に”フレイル”の予防を訴えている。ご本人の説明では、「フレイル」は「虚弱」を意味する"frailty"を形容詞化した造語で、虚弱の予防を社会にアピールするために、この言葉を普及させたい意図があった、とのことだ。だから、「オーラルフレイル」とは、口腔機能の低下のことで、具体的には、滑舌の低下、たべこぼし、わずかなむせ、咬めない食品の増加、などを指す(1)。

 なぜ、今、「オーラルフレイル」かというと、国民健康運動の核となるタームが必要だからだ。2007年に超高齢社会を迎えた日本では、2025年に団塊の世代が75歳以上となり、要介護高齢者が急増することが予想されるている。平成25年度から開始された「21世紀に おける国民健康づくり運動(健康日本21(第2次))」において、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD(非感染性疾患)の 予防) 、社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上 、健康を支え、守るための社会環境の整備 、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善、が国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向として示された。これは、いわば国家戦略として、国民の健康寿命延伸が取り上げられたわけだ。そして、これに対応して、2015年に日本歯科医師会は「健康寿命延伸のための歯科医療・口腔保健 世界会議2015」を開催したが、「オーラルフレイル」という言葉はこの会議において紹介された。

 口腔機能の虚弱化は全身の虚弱化の反映であるが、逆に口腔機能の維持が全身健康の維持にもつながるわけで、その意味で歯科医師会は、従来の齲蝕や歯周病だけでなく、口腔機能の管理や栄養支援がこれからの歯科の役割と捉えているわけだ。

 日本歯科医師会の向かう方向はよし、だ。

参考文献:

(1)オーラルフレイル、われわれは何をすべきか?the Quintessemce. Vol.36 NO.1.56-65.2017.

(2)日本歯科医師会HP:http://www.jda.or.jp/enlightenment/oral/index.html