セラミックの優位性 ~なぜセラミックは銀歯より優れているのか~2

実はこのセメントが流れ出す現象は圧倒的に保険で使用されている金属冠に起こりやすく、セラミック冠には極めて起こりにくいのです(絶対とはいいませんが)。それはなぜかというと、両者の使用するセメントに違いがあるからです。保険で一般的に金属冠を歯に乗せるのに使われるセメントは「ルーティングセメント」といい、被せものと歯の間の隙間を詰めるパテのような原理で両者を固定します。これは金属や歯の表面の凹凸にセメントという介在物が食い込むことによって両者を繋ぐ「嵌合(かんごう)」と呼ばれる原理を利用したもので、あくまでも「機械的な結合」です。

一方のセラミック冠は「レジン系セメント」と呼ばれるものを使用し、セラミックの分子と歯質の分子を化学的に結合します。これはセラミックの分子と歯質の分子が介在物を介して化学的に結合する「接着」と呼ばれる原理を利用したもので「化学的結合」です。そして、「化学的結合」は「機械的結合」よりもはるかに強度が高いのです。だからセラミック冠は金属に比べて経年劣化によるセメント流出が起こりにくく、結果として細菌が入り込む隙を与えません。これがセラミック冠が金属冠に比較して細菌に対する抵抗性が優れている理由なのです。つまり、セラミック冠は金属冠に比較して虫歯や歯周病になりにくいということです。

ちなみに保険の金属冠にレジン系セメントを使ったらどうなるか?という疑問が起こりそうですね。理論的には保険の金属冠を、その内面に適切なプライマー処理をしてレジン系セメントを介して削った歯の上に乗せれば“接着”が得られます。しかし、一般的には保険の金属冠にレジン系セメントはあまり用いられません。レジン系セメントの一部のものは保険適応されてはいるのですが、価格がルーティングセメントより高く、コスパの面から歯科診療を医業として成り立たせるためには日常的に保険の金属冠にレジン系セメントを使用するということはないようです。

(次回に続く)