今日も大阪国際会議場にいます。

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  日本口腔インプラント学会第二日目です。

今日も最初から最後まで会場にいました。 午前9時から10時30分までは米国のLoma Linda 大学教授Joseph Kan 先生の身振り手振りをまじえた白熱の講義を聴講しました。演題名は“Anterior Immediate Tooth Replacement: Science, Art,& Limitations”で、抜歯後即時インプラン植立の場合の注意点について述べられました。特に唇側の歯槽骨の委縮に対して結合織移植で対応することの有効性を強調されていたのは印象的でした。たとえインプラントと唇側骨板とのギャップに骨補填材を補填したとしても水平的に0.7mm、垂直的に1.2mm程度委縮するので、硬組織の委縮が起こったとしても、結合織移植が軟組織の委縮を防止し、長期予後において審美性が保たれる、とのことでした。また、インプラントの植立位置にしても天然歯の僅かに口蓋側寄りにインプラントをポジショニングするのですが、その埋入窩は理想のインプラント植立位置よりもさらに口蓋側よりに彫る、というのは重要な示唆であろうと思います。入れたい位置よりもわずかに口蓋側寄りに彫っておいた方が、インプラントが理想の位置に入りやすいというのはうなずけます。前歯部の場合、インプラントが天然歯の代替歯としての役割を期待されている以上、天然歯と同様に見えるインプラントを目指すことは当然の方向です。この部分は医科でいえば形成外科の範疇の概念でしょう。非常にチェレンジングな領域であり、自分も全力を挙げて取り組まなければならないと思います。

 

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  学会の最後は、疲れた頭のリラックスのために、午後2時から3時30分まで開催された市民公開講座の特別講演を聴講しました。講師は作家の五木寛之氏で、「こころ・と・からだ」と題された講演を聞かせて頂きました。
 
 五木氏といえば、近年の著述「下山の思想」で、日本は経済のピークを過ぎたのだから、これからは経済的繁栄のトップの座を他国に譲り渡し、今後は精神生活の充実を重視し、わが国は深く静かに衰退の道をたどることを自覚することで新たな時代に備えるべきだ、という趣旨のことを述べていたと思います。私は、衰退の道をたどることを容認せよ、といわれてもそれではなんだか日本国民の元気がなくなりそうで、それはちょっとなあ、という思いを持っていました。ところが、以外だったのは、わが日本は物作りにおいては重工業ではトップの座を譲り渡してもよいが、目、耳、歯、義肢、義足、などの人間の機能回復を図る繊細なテクノロジーを要求する分野においては世界の最高峰の技術を目指し、この分野で世界のトップになるべきだ、とおっしゃったことです。そう言われれば、大いに納得です。指をくわえて衰退を受け入れるのでは希望を失いますが、何かの分野で、特に日本人らしさを発揮できるテクノロジーの分野で最高レベルを目指すべきというのであれば、目標はわれわれに元気をくれるし、明日に希望をもたらすので、大いに同感です。
 それにしても、この方はお話が上手だと思いました。殆ど原稿を作らずにその場の空気を嗅ぎ取っておしゃべりになるそうですが、おおいに参考になります。