今日は筒井塾セミナー 「咬合治癒への道」を受講してきました。

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  今日はマルミ歯科商店さん主催で、高松市アルファ穴吹ホールで開催された筒井塾セミナー「咬合治癒への道」を受講してきました。

  講師陣は、塾頭の筒井照子先生を筆頭に、筒井塾の各インストラクターの先生方で、朝9時から夕方6時まで熱い講演が続きました。
そして、講演の基調は筒井照子先生によって語られました。それは、生態を治癒に導くにはStomatology (口腔医学ー病態に陥った原因を探し、取り除き、生態の治癒能を引き出す)とDentistry(歯科修復学―崩壊した部分を修復することによって崩壊以前の口腔に戻す)のバランスのとれた両輪が必要である、ということです。要するに従来のDentistryからの発想の治療 では、崩壊した歯列を持った患者さんを目前にした時、いきなり修復治療から入っていましたが、Stomatologyからの発想の治療では、先ず何がこの崩壊をもたらしたかという原因を精査し、その原因の除去こそが治療の根底になければならない、というものです。後者は医学の正統的な思考法にもとづく治療なので、あえてStomatologyという医学界で「口腔科学」として認知されている用語を使用されたのでしょう(日本口腔科学会の英語標榜名はThe Japanese Stomatological Society)。

 

 

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  Stomatologyに根ざした歯科治療の具体的な方法とは、矯正学、口腔外科学、補綴学、保存修復学、歯周治療学、歯内療法学、インプラント治療学など、あらゆる歯科分野の治療を駆使して生態を治癒へと導く「包括歯科臨床」であり、診査・診断を重視することであり、Medical Electronics機器を駆使した咬合療法を行うことであり、臨床生理咬合に根差した咬合面形態を付与した咬合再構成を行う、ということになるのでしょう。また、歯列に非生理的外力が加わる要因として姿勢を見逃すことが出来ない、ということも大いにうなずけます(筒井先生は歯列に加わる悪い力の要因としての姿勢を「態癖」という造語で表現していらっしゃいます。)
 

 

 

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  セミナーは大変興味深い内容でした。もともと歯科医学は咬み合わせを扱うことが大きなウエイトを占めているし、少し咬み合わせを狂わせただけで廃人を作り出す事例は枚挙に事欠かないように、咬み合わせは全身健康に大きく関連していることは明らかです。
したがって歯科医療の最も大きな使命は、咬み合わせをよくし、以て全身の健康増進に貢献することだと思います。そのために、従来の補綴治療や矯正治療、口腔外科治療、歯周治療、歯内療法、保存修復治療、インプラント治療は重要でしょう。
 
  そして、これらを包括した「包括歯科臨床」が確かに必要なのですが、これは私の考えなのですが、さらにこれまでになかった新しい歯科領域を創成しなければならないと思います 

 

 

 

 

 

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   従来の歯科で用いられてきた病態の解析法はあまりに機械論的であると思います。

たとえば限界運動を再現できるとする咬合器はその典型です。
また限界運動を解析しても病態の診断には結びつかず、咀嚼運動をこそ解析しなければならないとする生理的咬合論においてもその顎運動を3次元的に解析する手法は、シロナソグラフやナソヘキサグラフなどのMedical Electronics によるものです。
確かに生態は“かたち”を持っているので形態や運動軌跡を追求することは重要です。そして、そのうえでさらに、咬合の善し悪しを判定できる分子マーカーが欲しいと私は思います。つまり咬合の機能など、歯科疾患の病態を追求する手法の一環として、血液検査を導入するのは良い方法だと思うのです。
 
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 例えばアディポサイトカインの一種である“TNF-α”という物質がありますが、これの血液中の濃度は歯周病の治療と共に減少することが歯周病学において知られています。

ですから、例えば“TNF-α”のように、咬合治療領域においてもよい咬み合わせの時と悪い咬み合わせの時に変化する分子を生化学的に、あるいは分子生物学的に追求することは歯科医学のブレイクスルーにつながるでしょう。

 

 

 

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   なぜならそのような機能分子は、メディカルの領域の重要な機能分子とリンクすると思えるからです。

事実、先程の“TNF-α”はメディカルの世界では「腫瘍壊死因子」として知られ、感染防御作用や抗腫瘍活性、リウマチなどの医学領域でよく研究されている分子です。たとえばストレスを受けている際に上昇するとされるストレス分子があるとすると、それが咬合治療を受けて正しい咬み合わせになると減少する、という事実を臨床応用するのです。
実験レベルでなく、日常臨床レベルで歯科臨床に血液検査が導入されるようになると、われわれ歯科の過去から蓄積した膨大な経験智と、メディカルの膨大な医学知識が融合し、歯科は間違いなく医学において重要な牙城を築くでしょう。それぐらい歯科の全身健康に及ぼす実力は凄いと思っています。

 

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   この様な発想は私の独創ではなく、丸山剛郎先生の影響を受けたものです。昨年、何度か東京の丸山咬合セミナーに通わせて頂いた際に、丸山剛郎先生からお伺いした話が発想の根源にあります。

 
  もう少しで歯科の世界に大ブレイクスルーが起こると思います。それはとても明るい希望に満ちた世界です。その日の到来まで、地道に精進を続けたいと思っています。