インプラントの表面性状と骨との結合の早さ

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 インプラントが骨とどのように結合するかについて書く.以前,Brånemarkらは,インプラントが骨と結合する状態をオッセオインテグレーションと呼んで,特殊な結合様式が存在するかのような認識をしていた.しかし,1994年,Albrektsonらは,インプラントと周囲の骨との結合は「機械的な篏合(かんごう)」に過ぎないことを報告した.つまり,インプラントと骨との結合は特殊な化学的結合ではなく,インプラント表面に周囲骨が機械的に食い込んでいるだけなのだ.したがって,多くの接触面積をもって,しっかりと骨が食いつきやすいように,インプラント表面性状に各メーカーは工夫を凝らしてる.

 たとえば,アストラテックインプラントは,二酸化チタンによるブラスティングでインプラント表面に5~20μmのピットサイズの均一なくぼみを持つ粗造面を作り出し,「Tioblast」という商標で発売している.最近では,この「Tioblast」処理をさらにフッ化処理することにより,さらに小さなグリッドを形成し,ナノサーフェイス化することに成功しており,2005年より「Osseospeed」という商標で発売している.フッ化処理は表面へのカルシウム沈着を起こさせ易くすることがわかっており,インプラント表面での骨形成が促進されることが期待できる.

 以上は,アストラテックインプラントの例であるが,その他のメーカーも同様にその表面性状に独自の工夫を凝らし,インプラント表面での骨形成促進スピードを競っている. 例えば,ストローマン社のインプラントは,チタン表面をラージグリットのサンドブラスト処理した「SLAサーフェイス」を持ち,短期間で骨との結合が起こることを誇っている.最近では,さらに「SLActive」へと進化し,埋入後3~4週間での荷重が可能であることがメーカーにより謳われている.自分の臨床実感でも,確かに「SLActive」は早い.

 

 

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 インプラントと骨との結合の強さの度合いは,「インプラント定数」を測定することで判断できる.プローブから磁気パルスを「スマートペグ」に発信し、共振周波数を測定することでISQ値(インプラント定数)を算出・表示する「オステルメンター」という器械を用いることで測定できる.

 右写真は,インプラントにペグを接続した状態である.このペグに向けて磁気パルスを発信し,共振周波数を測定する.このケースはアストラテックインプラントであるが,埋入後2カ月丁度で,「80」という数字を打ち出していた.一般に70以上で荷重をかけてよいことになっているので.この数字は非常に良い.「Osseospeed」といい,「SLActive」といい,最近のインプラント表面性状の進化には目を見張るものがある.一昔前は埋入後の標準的免荷期間が3~6カ月であったことを考えると,インプラント表面性状は飛躍的進化を遂げている.