下顎のインプラント傾斜埋入は、マージナルボーンロスを招く

 前回、インプラントの傾斜埋入は内部ストレスを高める、と書いた。今回は、インプラントの傾斜埋入は、インプラント周囲のマージナルボーンロスも引き起こすことを書きたい。下顎の歯槽堤増大術をインプラント埋入に先立って施行した部位にインプラントを傾斜埋入した場合、特に舌側、あるいは遠心側に傾斜させて埋入した場合、マージナルボーンロスが顕著に出現するとの報告がある(1)。

 たしかに、傾斜埋入は、通常のインプラント埋入が困難な場合であってもインプラントの適応を可能にするので、実際の臨床の場でその適応を試みる臨床家の心理は十分理解できる。この世の中にはパーフェクトなものなどないという観点に立てば、多少のネガティブ要因と、インプラント適応がもたらすポジティブな効果とを比較して、傾斜埋入もよし、とする価値判断もあっただろう。しかし、インプラント周囲炎の問題がこれだけ取沙汰されている現在、マージナルボーンロスを惹き起こすことが明らかとなった著しくインプラントを傾斜させる埋入法は、現在ではもはや容認されにくいだろう。

 したがって、All on four は当院では行っていない。

参考文献:

(1)Clin Oral Invest (2015) 19:769–779

Implant angulation: 2-year retrospective analysis on the influence of dental implant angle insertion on marginal bone resorption in maxillary and mandibular osseous onlay grafts

Luca Ramaglia & Paolo Toti & Carolina Sbordone & Franco Guidetti & Ranieri Martuscelli & Ludovico Sbordone