多血小板フィブリンは骨内欠損への移植材として使用できる

 最近の米国歯周病学会誌から興味深い論文を紹介する。歯周病に起因する骨内欠損に対する治療法としては、従来、何らかの骨補填材を移植して、骨内欠損量を減少させる方法が一般的だ。自家骨移植がいつの時代もゴールドスタンダードで、最も骨再生能が高いことはよく知られている。が、実際は骨採取が侵襲的なので、いわゆる骨補填材が移植されることが多い。凍結脱灰乾燥骨DFDBA(Demineralized friezed dried bone allograft)は、よく知られた骨補填材で、死体から採取した骨を脱灰乾燥処理した材料で、歯周病治療・インプラント治療において一般的に使用されている。

 今回、この骨内欠損部にいわゆる骨補填材を移植する代わりに、多血小板フィブリンを単独で使用し、6か月後にDFDBAと同程度に骨再生を認めたという論文が最近のジャーナル・オブ・ペリオドントロジーに掲載されているのを見つけた(1)。多血小板フィブリンは魅力的な生体材料で、手術直前に患者さんから採血し、その自己血を遠心分離することにより、簡便に調達できる安心、安全な材料である。

 骨内欠損部に自家骨やDFDBAを移植すると骨が再生する理由は両者が活性の高い細胞増殖因子をリリースする能力があるからだ。そのDFDBAと同等に骨を再生できるということは、多血小板フィブリンも高い活性をもつ細胞増殖因子を包含しているということだ。再生療法のキーポインの一つは、再生能力のある細胞に働きかけてしっかり仕事をさせることであるが、骨の再生であれば骨芽細胞にしっかり仕事をしてもらえるようなサイトカインを局所に置いてくることが重要だ。多血小板フィブリンは豊富なサイトカインを包含しているため細胞増殖因子として利用出来るということになると、他の商品化されている細胞増殖因子よりも安価に調達できるところが魅力だ。

 只、難点は、フィブリンは採取しやすいが、扱いが粒子状の骨補填材よりも難しいことだ。グニャグニャしたグル状なので骨欠損部の周囲組織と固定するのがやや難しい。欠損部にしっかり固定しないと、留置しても逸脱すれば全く効果は期待できない。

 多血小板フィブリンは臨床的に魅力的な材料なので、日々の臨床に欠かせない。今後、多くの追跡調査で骨移植材としての評価が確立される日を待ちたい。

参考文献:

(1)J Periodontol. 2016 Nov;87(11):1253-1260.

Clinical and Radiographic Evaluation of Demineralized Freeze-Dried Bone Allograft Versus Platelet-Rich Fibrin for the Treatment of Periodontal Intrabony Defects in Humans.

Chadwick JK, Mills MP, Mealey BL.