つい最近、東京工業大学の大隅教授がオートファジーの研究でノーベル賞を受賞されたので、今日のテーマはオートファジーだ。オートファジーとは細胞のたんぱく質のリサイクルシステムのことだ。栄養の供給が十分でない時、生体は古くなった細胞内タンパクを自ら破壊してアミノ酸を生成し、生体に必要な新しいタンパクを合成する材料としてそれを利用するシステムだ。このオートファジーは、糖尿病やパーキンソン病、がんなどと関係しているらしい。そこで、今回は話題のオートファジーがどのように糖尿病と関連するのか調べてみた。
糖尿病の重大な合併症の一つに血管障害があるが、大血管系が障害されると心臓血管障害が引き起こされるし、小血管系が障害されると治癒障害が引き起こされる。こういった血管障害は血管内皮細胞の機能障害に起因するわけだが、高血糖状態が血管内皮細胞の増殖や分化などの機能にネガティブな影響を及ぼすのだ。糖尿病における血管内皮細胞の機能障害の機序については最近まで多くが不明だった。
ところで、最近になって、この糖尿病の血管内皮細胞の機能障害にはオートファジーが関与することが明らかになってきている。具体的には、高血糖下においては血管内皮細胞においてオートファジーが誘導され、ミトコンドリアの酸化ストレスの亢進と共に、血管内皮細胞の機能障害を起こすことが報告されている(1)。
これは糖尿病とオートファジーとの関連性を示す一部の例に過ぎない。自己を解体し新たな体を自ら創り出すことは生命の本質だ。オートファジーとは生命現象の本質のところだけに、多くの疾患の発症原因の根本の部分とかかわっているということだ。その機構の解明がノーベル賞に値することは十分理解できる。
参考文献:
(1)Biol Pharm Bull. 2014;37(7):1248-52.
Kim KA, Shin YJ, Akram M, Kim ES, Choi KW, Suh H, Lee CH, Bae ON.