CO2レーザー照射は創傷治癒を促進する

 レーザーは殺菌効果だけでなく、使用するレーザーの種類にもよるが、創傷治癒を促進する効果がある。手元に、ラット抜歯窩に炭酸ガス(CO2)レーザーを照射して、治癒課程を組織学的に観察した基礎研究論文があるので紹介しよう。

 一般に、抜歯後の治癒課程の一番最初のステージとして、抜歯窩が血餅に満たされる状況が出現するが、このプロセスが正常な治癒に至るための必須条件であり、極めて重要だ。 この実験では、抜歯直後の抜歯窩からじわーっと湧き出てくる血液に触れないように、非接触で高出力レベルレーザー治療(HLLT:High reactive Level Laser Therapy )を行った群、さらに翌日に低出力レベルレーザー治療(LLLT:Low reactive Level  Laser Therapy)を接触下で追加した群、および非照射群の三つのグループに分けて,治癒の様相を比較している。

 その結果、抜歯後21日目の組織学的観察では、3群とも抜歯窩に新生骨の形成が認められたが、レーザー非照射群が表面が陥凹していたのに対して、レーザー照射群は、2群とも表面が平たんだった。さらに骨形成量は、抜歯当日にHLLTを一回行っただけの群より、翌日にLLLTを追加した群の方が骨形成量のレベルが高かった。結局、抜歯当日と翌日にHLLTとLLLTの両方をおこなった群の方が骨形成量が多かったわけで、すなわち治癒が促進されたといえる。

 このCO2が抜歯後の治癒を促進する解釈として、論文内では血液に高レベルのレーザー照射を行うことで血餅を即時に形成させて正常治癒のスタートを約束し、低レベルのレーザー照射を追加することで破骨細胞や骨芽細胞の活性を高めることが出来、治癒スピードがアップすると考えている。

  こういったレーザーの治癒に及ぼす生物学的効果は、きわめて興味深い。少しでも早く治癒に持っていきたい局面が実に多いのがリアルな臨床だからだ。

 

参考文献:大郷友規,福岡宏士,大郷英里奈,柿本和俊,高橋一也,小正 裕. ラット抜歯窩への炭酸ガスレーザー照射による創傷治癒課程における組織学的解析. 日レ歯誌,25:75-81,2014.