接着材は進化し続ける

 今日は県の歯科医師会主催の学術セミナーで”接着”の話を聞いてきたので、今日のテーマは”接着”だ。具体的には接着性レジンだ。

 現在、各メーカーから多くの種類の接着材が販売されているが、その基本コンセプトは今も昔も変わらない。「エッチング」、「プライミング」、「ボンディング」の3つのステップが基本だ。以前は、それぞれのステップに対応する「エッチング材」、「プライマー」、「ボンディング」が売られていたが、やがてエッチングとプライミングがワンステップとなった材料(つまり一つの液で両方の役割をはたす材料)が発売されて2つのステップで接着出来るようになった。そして、今や、1ステップの接着剤が販売されている。つまり、一つの液で、「エッチング」、「プライミング」、「ボンディング」の3つの役割を果たすオールインワンの材料がでている。これはテクニックセンシティブだが、確かに便利だ。これは、「ユニバーサルボンド」と呼ばれるもので、どういう風にテクニックセンシティブかというと、エアブローが微妙に接着効果に効いてくるのだ。オールインワンにするため、疎水性のものと親水性のものを同じ溶液に混ぜるためにアセトンという溶媒をいれている。これを、エアブローで飛ばし過ぎると、親水性のものと疎水性のものが共存できなくて分離してしまう。つまり、エアーでアセトンを飛ばしすぎると両者が分離してしまう。微妙な湿り気の按配がキモだ。

 こういった、オールインワンのコンセプトは、長所と短所を併せ持つが、臨床はシンプルな方が良いので、多少のテクニカルな問題は注意深いトレーニングで克服可能と思う。接着操作がシンプルになる以外にも、このユニバーサルボンドは歯面に塗るだけで窩洞・支台歯のシーリング材として利用可能なことも魅力だ。知覚過敏歯に塗布することで象牙細管を即時に封鎖することも可能で、用途が多様という点で臨床的に優れているといえる。