PMTCってなんだ?

 これまでPMTCとは、歯科衛生士が担当するものと思い込んでいた。PMTCとは、Professional Mechanical Tooth Cleaning の略号で、直訳すると専門的機械的歯面清掃だ。この用語は予防歯科の世界的権威であるスゥエーデンのAxelsson  P.教授により初めて用いられた。彼のオリジナルな見解では、PMTCとは、「専門教育を受けた予防歯科看護師、歯科衛生士、歯科医師が選択的にプラーク(歯肉縁上のみならず歯肉縁下1~3mmまで)を、機械的清掃用具とフッ化物配合研磨剤を用いて、すべての歯面から取り除くことであり、いわゆる”予防処置”(ラバーカップと予防ペーストを用いた研磨.おもに頬側、舌側、咬合面などのリスクのない面に対して行われる)と、専門家による機械的歯面清掃(PMTC)を混同してはならない」とされている。しかし、現在の我が国におけるPMTCの定義は、「口腔ケアにともなうさまざまな機材を用いた専門家による歯面清掃すべての総称をPMTCという」が一般的である(1)。

  ここで着目したいのは、Axelsson教授のオリジナルの見解では、PMTCを担当するは口腔の専門家であり、歯科衛生士に限っていないことである。歯科衛生士以外に、歯科看護師および歯科医師が担当してよいことになっている。要するに専門性の高い高度の歯面清掃は、専門職によって行われる必要があるということだ。

 ちなみに、スウェ―デンの歯科医療制度は我が国とは違い、歯科医療を補助するものとして、歯科衛生士、歯科技工士、歯科看護師が存在する。前二者は我が国と同じだが、歯科看護師という職種が存在する。世界の歯科医療制度を紹介した 『日本と世界の歯科医療』 によれば、スゥエーデンでは歯科診療補助者としては歯科衛生士(2,900 名)、歯科技工士(1,348 名)、歯科看護士(約 14,000 名)の職種がある。歯科治療において補助者が働くシステムはスウェーデンでは非常に発達しており、オーラルヘルスケアの多くを歯科診療補助者が行っている。日本と異なり、歯科衛生士は独立して勤務、開業が可能であり、その職務にはう蝕や歯周病の診断等が含まれ、充てん処置や局所麻酔を行うことが認められている。歯科衛生士のうち 600名が民間歯科診療所に雇用さ れ、2,100名が公共の歯科診療施設に勤務し、200名が自ら開業している。歯科衛生士は自らの職務に法的責任を持ち、患者への費用請求が可能である。この診療価格設定費用は、歯科医師のものとは異なっている(2)。

 調べてみると、スゥエーデンにおいてもやはり口腔ケアは歯科衛生士や歯科看護師が主になって担当しているようだ。歯科医師がなぜ行わないかというと、スウェ―デンでは歯科医師の数が少ないことが直接関係しているだろう。わが国でも、歯科医師は根管治療や義歯治療などの一般治療に忙殺され、直接PMTCを行う時間がないことが原因といえる。

 今日、あえて言いたかったことは、PMTCは単なる「おそうじ」ではなく、齲蝕や歯周病の病因である口腔細菌を取り除く、高度の専門性に裏打ちされた医療行為であることを再認識する必要がある、ということだ。そして、齲蝕や歯周病を予防することが国民の健康長寿に直結することが明らかとなった今、歯科医師はそれを歯科衛生士に丸投げするのでなく、PMTCの具体的なテクニックやその効果について自ら研究する義務があると思うのである。そして、たとえ自ら行うことはなくとも、行うことが出来、歯科衛生士に技術指導ができるレベルでなければならないと、自戒を込めて思う。

 

参考文献:

1 内山 茂、波多野映子著. 歯界展望MOOK PMTC2.  医歯薬出版.東京.2003.

2 医療法人社団 星陵会 平 健人. 『日本と世界の歯科医療』 ~国際比較から見た日本の歯科医療の姿~ .

     千代田ファーストビル歯科HP.(www.chiyoda1st.com/iryo.html)