歯周治療における細菌検査の意義

 歯周炎は感染症だ。その原因菌は歯周病現菌である。その中でも強力な歯周病菌はPorphiromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella Forsythiaだ。この3菌種はレッドコンプレックスと呼ばれている。しかし、レッドコンプレックスに感染していないものの、それ以外の弱い病原性しか持たない歯周病菌も存在しており、不潔にしていたためにこれらのの弱い病原性により引き起こされた歯周炎を「不潔性歯周炎」と呼んで、レッドコンプレックスによる歯周炎と区別している。レッドコンプレックスによる歯周炎は質が悪く治療に抵抗しがちだが、非レッドコンプレックス菌による不潔性歯周炎は質が良く、治療によく反応するからだ。

  そこで、歯周炎の原因菌が、レッドコンプレックの感染か、非レッドコンプレックスの感染かを知ることで、治療の予後や今後のリスクを判断することが出来る。

 細菌検査の意義は歯周炎の程度を図るためではない。程度は出血の有無で十分判断できる。なぜなら、レッドコンプレックスの細菌は、その増殖に鉄分を必要とするが、それを血液中のヘム鉄から採取している。つまり、歯周ポケット粘膜内面に潰瘍が形成されると出血してPorphiromonas gingivalisを勢いづかせるが、一旦活動を活性化させたPorphiromonas gingivalisは粘膜上皮細胞内に侵入し、上皮の修復を行う上皮細胞の増殖を邪魔する物質を出して出血を長引かせる。つまり、出血が起っている部位には活発に活動中のPorphiromonas gingivalisがわんさかうごめいていると考えてよい。だから、炎症の程度を知るための細菌検査は必要ない。

 細菌検査の意義は、歯周炎の診断とリスクを判断するために行う。なかでもPorphiromonas gingivalisが起炎菌として存在しているか、否かは重要な情報だ。こいつが存在している場合は、手ごわい相手と認識して,心して戦いをいどまなければならないのだ。

参考文献:天野敦雄. 21世紀の科学でペリオを診る.Osaka Academy of Oral Implantology. 第29号. 13-18.(2014.4.1~2015.3.31)