歯科用金属をめぐる不都合な真実 5 ~金銀パラジウム合金~ 

二番目の有害金属は「金銀パラジウム合金」です。歯科では通称「キンパラ」と呼ばれている合金です。その組成はJIS規格で、金12%、パラジウム20%、銀50%前後、銅20%前後、その他インジウムなどが数%となっています。この金属は強度があるため大臼歯にも応用でき、わが国では健康保険でつくられる金属冠(被せもの)や金属充填物(詰め物)の中心的材料です。しかしながら、この「金銀パラジウム合金」は有害性があります。金属アレルギーを起こしやすいからです。この金銀パラジウム合金に対し「リンパ球幼若化検査」をすると約半数の人に陽性があらわれるといわれます。この検査が陽性反応を示す意味は、この金属はその被験者にアレルギーを引き起こす可能性があるということなのです。

この「金銀パラジウム合金」の成分のうち、なにがアレルギーを引き起こすかといえば、パラジウムと銅がその可能性があります。金は貴金属で生体のなかで最もイオン化傾向が低く、また銀もイオン化傾向が低いので、ともに金属アレルギーを引き起す可能性は低いです(とはいえ、金に対してもアレルギーが起こることがあります)。(しかし、金属アレルギーの検査を行うと、意外と結構な頻度で、金がアレルゲンとして反応することが知られています)しかし、残りのパラジウムや銅はイオンとして溶け出し、金属アレルギーを起こす可能性があるのです。なので、欧米などの先進諸国ではパラジウム合金は使用禁止となっています。
たとえば、ドイツの保健省では、1993年に歯科業界に対し、妊婦や小児に歯科治療でパラジウム合金、水銀、銅、銀アマルガムを使用しないように勧告しています。スウェーデンでも、すでに1987年の段階で、パラジウムは妊婦と小児には完全に使用禁止です。
しかしながら、日本の厚生省は、金銀パラジウム合金が有害であることを認識しつつ、ある理由から、日本だけで使用される非常に特殊な歯科用合金の使用を認めています。そのある理由の一つに口腔内に耐える硬さがあり、また比較的安価であったことが挙げられます。社会保険制度を守るために、コストの高い貴金属(金、白金)ではなく、コストの比較的低いパラジウムを使う必要があったのです。
しかしながら、昨今、パラジウムの価格は世界的に高騰してきており、もはや低コストだからという理由は合理性を失いつつあります。むしろメタルフリーの材料の方が低コストとなりつつある状況です。
(次回に続く)