学問の世界の自由な雰囲気は素晴らしい

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  今日は広島国際会議場で開催された第66回日本口腔科学会学術集会に参加して来ました。午前中は一番広いA会場に陣取り、新進気鋭の若手研究者のシンポジウムを聞いたり、海外からの招待講師による特別講演を聴いたりして過ごしました。海外からの講師の講演では、日本人のKeiichi  Itakura 氏の講演を楽しく聴きました。
 
  Keiichi Itakura氏は 癌や糖尿病の研究領域で有名なカリフォルニアのCity of HopeのBeckman  Research Instituteの教授をされておられる世界的に高名な研究者です。世界で初めて合成遺伝子によりインスリンやソマトメジンを大腸菌で産生することに成功した、今日では誰もが知っている医学史上のエポックは彼の業績です。
 
  凄い実績を挙げられた先生は、着飾らず、ノーネクタイのベスト姿のラフな服装で登壇されました。そして、使用されたスライドも特別凝ったものでなく、シンプルなもので、さりげなくバイオテクノロジーの黎明期を振り返る形で、ワトソン・クリックの二重らせんの話から始まりました。 

 

 

 

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   若手研究者の話は最先端すぎて、テクニカルタームが飛び交い、よくわからない部分が多いのですが、一方、大先生の話はDNAからRNAが転写され、そしてたんぱく質の産生に至るセントラルドグマやコドンの話など、今日の生化学の教科書の知識を復習する様なものから始まり、もの凄い実績を挙げられた先生なのに、とても基礎的なお話をなさいました。そして、内容のある方ほど、話も姿も飾ることなく、本質を突き、誰にもわかるように平易にお話をされるところは流石と、ただただ感心しました。 

 
  印象的だったのは、とても研究を楽しんでおられることでした。米国では自己の責任の下で自由な発想で仕事をすることが出来るので、仕事がやりやすく楽しいとおっしゃいました。教授から指図されたり、他人から嫌なことを強要されてやる、ということがないので自由な発想を実行することが可能である分、日本よりも研究が成果を上げやすく、そして重要なことは、国家戦略として基礎研究が国家の命運を決める重要な投資対象と考えられているところが日本と根本的に違う、と強調されたことです。 
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  若手の人は、特に米国に行って何も研究しないでもいいから、米国人の自由な発想を感じることだけでもいいから、2~3年留学することがとても貴重な経験になる、是非海外に出て行くべきである、と言われたことは印象的でした。
 
  特別講演を聴いて感じたことは、学問を追求する人間の自由な精神の素晴らしさです。好きなことを寝食忘れて追及出来ることは素敵なことであるし、アスペルガ―的精神傾向のある僕としては羨ましいかぎりでした。
 
  かつて僕が生化学教室に出入りしていた大学院生だったころ、周りの本物の研究者はみな夢を持っていたように思います。Nature や プロナス(Proceedings of the National Academy of Science)に投稿することを励みに研究に専念しておられた研究者を身近に見て、羨ましく思っていました。そして、僕もまかり間違えば、そちらの方面に行っていたかもしれません。それくらい、興味の持てることに没頭できることは素晴らしいと思っていたし、今でもそう思います。
 
 
  そして、今では基礎研究も面白いけれど、臨床も面白いと心底思っています。歯学も医学も面白い!われわれの仕事が寝食を忘れるほど面白く感じることが出来るようにするためには何が必要か?その答えは今日の特別講演にある様に思います。  
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  つまり、自分が面白いと思えることをのみやればいい、ということだろうと思います。臨床は本質的に面白いのですが、いろいろ余分なことを考えるからタスクが過剰になり、疲弊していくのだと思います。

 
  僕は、自分の仕事を一生の仕事と思っていますが、そのためには嫌なことをやらないようにしたいものです。幸福な生き方とは、自分の信じる価値観を信じてまっしぐらに突き進むことでしょう。その価値観とは、臨床を通じて人々を幸福にすること。
 
  実に多くの失敗を積み重ねて来たけど、その失敗が許されるならば、この生き方を貫き通せたら、この様な自分でも、数々の愚行を償えるような成果が挙げられるかもしれません。そう信じて、明日から頑張ります!