歯周病の最新病因論(2)

 前に歯周病の主たる病原菌は,Porphyromonas.gingivalis, Tannerella forsythia,  Treponema denticola に絞られて来た,と書いた.今日はその中でも主犯格の P.gingivalisについて書く.

  P.gingivalisは誰の口の中にもいる常在菌だ.だから,歯周病を発症していない人の口の中にも,不顕性感染として存在している.そして,このものは普段,おとなしい振りをしているが,環境が整えば凶悪性を発揮してくる,その環境とは出血だ.P.gingivalisは,栄養素としてヘム鉄(血液の中の赤血球に含まれる)の摂取が欠かせず,これがないと活発な増殖できない.よって,出血のない歯周ポケットでは,P.gingivalisはおとなしくしているので,歯周病は発症しない.しかし,ポケットの中に出血が起ると,がぜん元気に増殖を開始し,凶悪性を発揮し出すのだ.

 歯周ポケットの内縁上皮はプラークの沈着や宿主の抵抗力の低下によって ,P.gingivalis以外の細菌が炎症を起こす.その結果,ポケット内面の粘膜面に潰瘍が生じ,出血が起る.そして,最悪の歯周病菌であるP.gingivalisが眠りからさめ,暴れまくって歯周組織を破壊する,というわけだ.

 つまるところ,歯周病の発症のトリガー(きっかけ)は,出血ということになる,歯周基本治療として行われているスケーリングやルートプレーニングの目的は,この出血の阻止にあるのだ.機械的な歯面清掃により,バイオフィルムは大きく減少し,出血が治まる.そして歯周病が発症しない状態に戻る.