スピーの弯曲

2016113102131.jpg

 日々の自分の臨床の中で大切にしているものの中のひとつに咬合平面がある.咬合平面とは,簡単に言うと,歯列を構成する各歯の咬む面で構成される平面だ(写真左).といっても,全くの平面ではなく,それは多少弯曲している.側方から見ると,前歯から小臼歯,そして大臼歯にむかって緩やかに上方に向かって反りあがっている(写真中).そして,前後方向から見ても,咬合平面は下を凸にして緩やかに弯曲している(写真右).

 スピーの弯曲とは,側方から見た場合の緩やかに上方に反り上がる弯曲のことだ(写真中).

 写真は下記の文献から引用.

 参考文献:Martin Gross.The science and art of occlusion and oral rehabilitation. London, Quintessence Publishing,2015.

 

2016113103440.jpg

 なぜ,このような弯曲が存在するかというと,それは顎骨の中で各々の歯の軸が少しづつ異なっていることに由来する(写真).そして,なぜ咬合平面が重要かというと,その理由の一つには快適に,よく咬める状態にするために必要だからである.

 咀嚼する際に,下顎骨は上顎骨に対して単純な上下運動だけのタッピングをしているわけではない(凍えた時には,ガチガチ歯を鳴らしてタッピングしているだろうが).咀嚼する際の下顎骨の運動について述べると,下顎骨は中央から,一旦,側方かつ後下方に移動する.そこから再び元の位置に戻ってくる際,上下の歯が接触して,両者の間に挟まっている食物が破砕され,最後の終末位(咬頭嵌合位)でものがぐちゃっと潰されてこなれる,という具合になっている.

 スピーの弯曲は,下顎の咀嚼運動において,上下の歯が不必要に終末位以外で接触しないようにする為に必要なのだ.また,上下の歯列間の間隙を適切に保つためや,食べ物を歯の咬合面というテーブルに乗せて咬み砕きやすいようなお膳立てをするためにも役立っている.

 さらに,スピーの湾曲は,咀嚼以外にも,非機能運動であるブラキシズムにおいて,犬歯誘導が適正に機能して臼歯のディスクルージョンを保証するためにも必要であり,このためにも重要だ.

 

2016113111757.jpg

したがって,右のパノラマX線写真のように,スピーの湾曲が逆転している場合は,咬みにくさにつながり,是正されることが望ましい.

咬合平面は,咬みやすさの問題だけでなく,全身の姿勢や腰痛などの問題にも関係しているので重要だ.詳細については,本HPの”Dentist"に書いたので,よかったら読んでいって欲しい.

 

www.nakayamadental.com/contents/2016/10/post-19.php