チッピング

20161111192718.jpg

 歯冠の一部が欠けることをチッピングと呼ぶが,なかなか嫌なものだ.上の写真は,上顎犬歯のレジン前装冠の破折である.金属にレジンを貼り付けた二層構造をしているので,犬歯誘導という重要な役割を担うつけで,犬歯の場合は切端部にかかる側方力が,唇面に貼っているレジンを剥離させることがある.この場合のリペアは比較的容易だ.金属に接着するレジンを,再度,唇面に貼り付け,犬歯誘導時に,下顎の犬歯がレジン面を滑走しないように咬合調整することはそれほど困難なことではない.

20161111201522.JPG

 一方,咬合面となると話は別だ.たとえ咬合面にレジンを貼ったとしても,強い咬合圧で間もなくすり減ってしまい,もとの木阿弥になる.だから,咬合面をレジンで被覆しているクラウンの,咬合面のチッピングは厄介なのだ.

 かといって,絶対に割れない超硬い素材で歯冠を被覆した場合,歯冠はチッピングしなくても,歯根破折や辺縁歯槽骨吸収などを起こしかねない.歯根が折れたり,歯根周囲の骨が溶けるくらいならチッピングした方がまだマシ,という考え方もある.割れた方がいいのか?割れない方がいいのか?チッピングの問題は臨床家の悩みの種といえる.