いわゆる従来型の部分義歯とインプラントブリッジは共存できるか?

 インプラントと、取り外し自在な従来型の義歯を口腔内に共存させることは結構多い。新しいものと古いものとのコラボという感じだが、この場合の義歯はインプラントが義歯を下支えすることでサポートする格好となるのが一般的だ。インプラントの上にかぶさっていく格好になるインプラントオーバーデンチャーといわれるものだ。義歯は本来、ふわふわした粘膜の上に乗るものだから、どうしても咬み圧で沈下したり、側方に若干移動したりする。ところが、インプラントは顎骨の中で動かないので、これにかぶさるインプラントオーバーデンチャーは顎骨にリジッドに固定される。アバットメントと呼ばれる接続装置を介在させるからだが。総義歯の場合、無歯顎の顎堤に2本、ないし4本インプラントを埋入する。こういった形で使用されるインプラントが義歯の維持、安定にもたらす貢献は臨床研究で十分に確認されている。

 ところで、総義歯は避けたいのでインプラントを考えるわけだから、インプラントオーバーデンチャーの受け入れに躊躇するというケースがある。この場合、インプラントの一般的な使われ方であるインプラントをブリッジの支台として使用し、インプラントブリッジで歯列を構成することになるのだが、その場合、インプラントを埋める場所に制限が加わることがある。たとえば、上顎の臼歯部は上顎洞底が歯槽頂に接近し過ぎているとサイナスリフトが必要となり、高齢者にはいささかハードルが高くなる。そこで、前歯部にはボーンアンカードブリッジ(=インプラントブリッジ)、無歯顎の臼歯部にはブリッジの咬合面遠心端にレスト座とクラスプをかけて従来型の部分義歯をのせるというアイデアが浮かぶが、そのような例はあまり一般的でない。そこで、そういった臨床例がないか調べてみた。

 結論から言うと、インプラントブリッジと従来型の部分義歯との共存は可能だ。ただし、インプラントブリッジと部分義歯との接続部に精密なアタッチメントを用い、かつその連結はリジッドではなく、多少義歯がフリーに移動出来るものでなければならない、という条件が付くのだが。安易に、インプラント上部構造のクラウンブリッジに、従来型のエイカースクラスプなどはかけないほうが良いと思われる。エイカースクラスプのクラウンへの接続様式はリジッドであり、強固にクラウンをホールドし過ぎるからだ。

 インプラントブリッジがメインで、アバットメントの介在により従来型の義歯がサブとして使用が可能になる、というのはインプラントオーバーデンチャーの場合と両者の位置づけが真逆になっているようで、面白い。 

参考文献:Precision attachment case restoration with implant abutments: a review with case reports. Feinberg E.J Oral Implantol. 2011 Aug;37(4):489-98.