CO2レーザー照射は埋入後インプラントのオッセオインテグレーションを加速する

 炭酸ガスレーザーは、蒸散などのhigh level reactive laser treatment (HLLT)作用と、照射部位における細胞増殖、創傷治癒促進などのlow level reactive laser treatment (LLLT)作用の両方の使い方が可能だ。で、今回のテーマは炭酸ガスレーザーのLLLTの方。

 ラットの脛骨に皮膚上から炭酸ガスレーザーを照射し、皮質骨表面の骨形成を促進するという報告がある。そこで、インプラント周囲の骨とインプラントがオッセオインテグレーションを起こす場にレーザーを照射すれば、骨形成を促進することによりオッセオインテグレ―ションが増強するのではないかというアイデアが生まれる。そして、それを実験で確認したレポートがある(1)。

  実験の詳細は、ラット脛骨上の皮膚を切開剥離し、骨内にチタンインプラントを埋入後、皮膚を復位縫合する。その後、週3回のペースで炭酸ガスレーザーを皮膚上10cmの距離から一定の条件で照射した後、適当期間経過後に安楽死させ、得られた組織切片を対照群と比較するというもの。その結果、レーザー照射群では、インプラント周囲の新生骨形成量が対照群に比較して多かった。

 こういった現象はなぜ起こるのだろう?炭酸ガスレーザーは10.6μmという比較的長い波長で水分への吸収性が高いゆえに、骨内深部のインプラントと骨の界面まではレーザー光は到達しないはずではないか。なのに、なぜ、レーザーはインプラント表面の骨形成に生物学的効果を及ぼすことが出来るのだろうか?

 この疑問に対して、この論文内では以下のように推察している。レーザー光線は届いたとしてもせいぜい皮質骨までだろうから、骨深部にあるインプラント周囲の骨形成促進効果は、皮質骨表層にいる細胞が、細胞突起とGap junctionを介して、深部に情報を伝達し、深部の骨形成性細胞を働かせた結果と考えている。その皮質骨表層に存在する細胞とは骨細胞で、骨形成を担当する骨細胞はメカニカルフォースに対するセンサーを持っていると考えられている。レーザー光線の物理学的性質が骨細胞にメカニカルフォースを感知させて、骨深部に存在する骨芽細胞とのネットワークを強化し、骨芽細胞の骨形成を促す可能性が示唆される。

参考文献:

(1)金子友紀.炭酸ガスレーザーがラット脛骨チタンインプラントのオッセオインテグレーションに及ぼす影響.日口腔インプラント誌.25(1). 13-21.2011.