咬合性外傷は歯周組織の破壊を起こすか?

 歯周病を引き起こす直接の原因は歯周病菌の感染であり、咬合性外傷は細菌感染により引き起こされた炎症を修飾する、という理解が一般的だ。正確なことをいえば、咬合性外傷と歯周病との関連性は完全に解明されているわけではない。

 咬合性外傷が歯周組織の破壊をもたらす可能性を示唆したのは、Glickmanの共同破壊説が発端となっている。これは、歯周炎の存在する歯に外傷的な力が及ぶと、プラークに起因する炎症の波及方向に変化が起り、垂直性骨欠損を生じるとするものだ。しかしながら、現代では、動物実験のデータにより、外傷が炎症の波及方向に影響を及ぼすことは否定されている。歯にジグリングフォースをかけると、根尖部および辺縁骨部の歯周靭帯で血管数の増加、血管壁の透過性の増大、コラーゲン線維のリモデリング、歯槽骨吸収などが起るが、骨縁上の結合組織には影響を与えず、歯周病の進行を加速することはなかった、とする報告がある。

 すなわち、咬合性外傷が歯周病の進行を加速する、というエビデンスはないということだ。歯周病の進行を止めるための第一にすべきことは、あくまでも感染の制御である、ということになる。

参考文献:大月基弘.歯周病から第一大臼歯の喪失を防ぐにはー具体的な分岐部病変の治療ー.the Quintessense.Vol.35 No.12,117-124.2016.