ストレッチの効果~ストレッチは筋肥大を起こす~(2)

 筋肥大を得るために筋肉トレーニングを行うと、その主な効果はトレーニングを受けた筋に起こって来る。この現象を説明するために、支配神経からの神経栄養因子などが考えられていたが、近年、筋細胞自体に機械的刺激受容体が存在することがわかってきた。伸展可能なシリコン培地に骨格筋細胞を培養し、シリコンに機械的刺激を加えて筋細胞を培地ごと伸展させると、筋細胞が肥大することが認められたのだ。この事実により、筋細胞はストレッチ刺激により肥大を生じることが証明された。in vivoの実験においても、ニワトリの広背筋で、他動運動(=第三者や機械により行われる運動)により、筋線維の断面積増加、筋線維数増加、筋構成たんぱくの合成の増加が確認された。さらに、他動的に骨格筋をストレッチすることでも、DNAの転写が促進される。すなわち、筋のストレッチで、細胞の活性化を示すc-fosやc-junの発現、筋構成たんぱくのミオシンやアクチンの遺伝子発現が認められることが明らかとなった。

 その後、筋細胞にはストレッチ刺激を感知し、細胞内に情報を伝達し、細胞構成たんぱくの合成を促進することより細胞を肥大化させるシステムが存在することが明らかとなった。そして、筋細胞にストレッチ刺激が加わった場合、その機械的刺激を感知するストレッチ受容体が筋細胞で見つかっている。

 そのストレッチ受容体がインテグリンである。インテグリンは、細胞表面にある2量体たんぱくで、当初、細胞接着に関与する因子として同定されたが、近年、ストレッチ刺激の主な受容体であることが判明している。

参考文献:池田 聡、他. 分子生物学的観点から見たストレッチと筋肉増強. 総合リハ.30巻.11号.1065-1068.2002