口呼吸は健康に悪い

 「口呼吸が健康に悪い」ということが、よく言われるようになってきた。それはなぜなんだろう?今日のテーマはその問題だ。

あいうべ体操で有名な、みらいクリニック院長 今井一彰先生の著書によれば、口呼吸が発症に関与している疾患の一覧が紹介されている。それらを列挙すると、以下のような疾患が挙げられている。

 膠原病(関節リウマチ、エリテマトーデス、シェーグレン症候群など)、間接痛、花粉症、鼻炎、鼻づまり、アトピー性皮膚炎、湿疹、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、気管支喘息、下痢、便秘、過敏性腸症候群、クローン病、胃炎、うつ病、パニック症候群、全身倦怠感、ドライマウス、口内炎、口唇ヘルペス、慢性副鼻腔炎、鼻茸(はなたけ)、いびき、睡眠時無呼吸症候群、不眠症、歯周病、虫歯、歯列不正、インフルエンザ、風邪、肺炎、気管支炎、上咽頭炎、痔、高血圧、糖尿病、腎臓病、肝炎、虫垂炎、冷え性、頭痛、肩こり、腰痛、顔の老化

 口呼吸が健康に悪い一つ目の理由は、免疫のシステムを損なうからだ。のどの奥には「ワルダイエルのリンパ輪」とうリンパ集団があるのだが、口呼吸だと病原菌が口から直接、このリンパ組織に到達し、感染を起こしてしまう。するとリンパ組織自体が病原菌のたまり場になってしまい、十分に働けなくなる。つまり、リンパ集団が感染巣となってしまいその結果、免疫の作用が低下する。これは深刻な問題だ。

 二つ目の理由は、そのリンパ集団の感染巣が「病巣感染」として作用し、のどとは別の皮膚や内臓にも慢性炎症を引きおこすことだ。病巣感染とは「身体のどこかに限局した慢性炎症があり、それ自体はほとんど無症状か、時に軽微な症状を呈するに過ぎないが、それが原因となって原病巣から直接関連がないと思われる遠隔の諸臓器に反応性の器質的あるいは機能的障害を起こす病像」と定義されるものだ。わかりやすく言うと、身体の一部に慢性の炎症があると、それ自体の症状は軽くても、これが原因となって他の臓器に病気(二次疾患)を引き起こすことだ。その機序としては、原病巣の病原菌が菌血症となって拡散することや、原病巣の細菌毒素などが障害を起こすこと、原病巣の原因菌が抗体産生を誘導してアレルギーを起こすことなどが考えられている。つまり、喉の慢性炎症が別の部位の慢性炎症を引きおこすわけで、これもやはり重大な問題だ。慢性炎症は糖尿病や動脈硬化、老化など、多くの疾患を引き起こすキーワードと考えられているからだ。

 三つめの理由は、自律神経を乱すからだ。口呼吸は体にストレスをもたらす。そしてストレスは自律神経を乱す。自律神経のうち、交感神経が過剰に働いたときにがんや心疾患、脳卒中、糖尿病などになりやすい。また、副交感神経が過剰に働けばアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー性疾患やうつ病を発症しやすい。

 四つめの理由は、歯周病やドライマウスになることだ。口呼吸は口腔を乾燥させるが(ドライマウス)、口が乾くと唾液の抗菌作用が低下し、歯周病になりやすくなる。

 五つ目の理由は、いびきや睡眠時無呼吸症候群になるからだ。口を開けて寝ると舌根が沈下し、気道の閉塞を招く結果、いびきや睡眠時無呼吸症候群になりやすい。

  以上のように、口呼吸は健康に悪いのだ。

参考図書:(1)今井一彰著.健康でいたいなら鼻呼吸にしなさい. 河出書房新社.2015.