覚醒時ブラキシズムとTCH~2~

  前日に書いたように、ブラキシズムは顎関節症を含めて顎口腔領域にさまざまな害を及ぼすので、しっかり対応しなければならない問題である。ブラキシズムは非機能的な、つまり無意味な反復される歯の接触であり、強い力で行われれば「食いしばり」、弱い力で行われれば「TCH」と呼ばれるということだ。だから「食いしばり」も「TCH」も、両方ともブラキシズムだ。そして、「食いしばり」などの強い力での咬みしめは短時間しか出来ないのに対して、弱い力の「TCH」は長時間持続可能だ。あるデータでは、最大咬合力の40%の力で咬み続けられる時間はわずか1.5分程度であるのに対して、7.5%の力で咬み続けられる時間は、その100倍の約2.5時間であるといわれている。

 ところで、TCHはなぜ起こるのだろう?

 一つの原因は、「緊張性歯根膜咬筋反射」だ。これは、上顎前歯部を舌側から唇側に向かって弱い力を加えると、咬筋の持続性筋活動が誘発される現象をいう。この、上顎前歯部を舌側から唇側に向かって弱い力を加える状態は、頭部を前傾させてややうつむくような姿勢をとる場合に生じやすいと思われ、デスクワークや携帯端末操作などが該当する。つまり、このような前傾姿勢が「緊張性歯根膜咬筋反射」を起こしTCHが起こるわけだ。

 二つ目の原因は、ストレスや過度の緊張と集中だ。集中作業を行うと咬筋の筋活動がレベルが増加するという報告がある。

 三つ目の原因は、心理社会的要因だ。具体的には、職場の対人関係、仕事のコントロールの度合い、働きがい、疲労感、不安感、抑うつ感、上司や同僚のサポートの有無、などがあげられる。こういった心理的、社会的的要因があると歯を接触させる行動を起こし易いと考えられている。

 四つ目の原因は、これは最近いわれてきていることなのだが、すれ違い咬合や咬合支持の喪失(難しい表現だが、上下の奥歯がきちんと対向しないため、咬んだ時に下顎位が上顎に近づきすぎる状態のこと)や不安定な義歯もTCHを引き起こしやすいことが報告されている。

参考文献:(1)西山 曉. 覚醒時ブラキシズムとTCH.The Quintessence.Vol.35 No.7. 42-55.2016