インプラント表面の性状の違いで、なぜ骨との結合スピードに違いが出るか?

 今日、抜歯即時埋入したストローマンBLTインプラントのオステルを計測したら]、66~67の数値を打ち出していたので驚いた。埋入後、まだ50日しかたっていないからだ。前にも書いたが、一昔前は、オッセオインテグレーションに至る平均期間が3~6カ月であったことを考えると、現代のインプラント表面性状の進化が骨との結合期間を著しく短縮していることに驚嘆する。そこで、今日は、インプラント表面性状の何が変わったから、これだけ骨との結合スピードが上昇したのかについて調べてみた。

 インプラントの表面が具備する性状が骨と結合するスピードに影響を与える具体的要素として、表面トポグラフィー(表面粗さ、細かな凸凹具合)、化学的性質、表面の荷電、濡れやすさ、といったものが挙げられる。1999年に発表されたストローマンのSLA(Sand-blasted Large-grit Acid-etched )サーフェイスを例にとると、先ず、表面粗さだが、サンドブラスト処理してマクロラフネスが与えられ凸凹になった表面に、さらに酸エッチング処理することで2-4μmのマイクロピットが出来上がっている。このような粗造な面が骨界面となった場合、骨芽細胞様細胞の増殖や分化、タンパク合成に有利とされ、従来のTPSサーフェスに比較して治癒期間が短縮された。さらに、SLAサーフェスに新たな改良が加えられ、2006年 世界初の親水性表面構造(hydrophilic surface)が開発され、SLActiveとして発売された。これは酸化チタン表面に親水性を具備させたもので、要は濡れやすい性状を獲得させた。これにより分子表面が水のシェル構造でくるまれた形で存在するタンパクなどの生体物質がよりインプラント表面に付着しやすい環境を作り出すことに成功した。その結果、SLAサーフェイスよりさらに治癒期間が短縮された。

 と、ストローマンのインプラント表面性状の例を出して説明したが、各メーカーともインプラント表面で骨形成が速やかに行われるような環境づくりに貢献できるような表面性状の開発に心血を注いでいるわけだ。そのおかげで、インプラント治療は確かに治療期間が短縮されてきた。これは患者にとっても、歯科医師にとっても感謝すべきことである。

20161118202236.jpg

 

参考文献:

Bornstein MM, Wittneben JG, Brägger U, Buser D. Early loading at 21 days of non-submerged titanium implants with a chemically modified sandblasted and acid-etched surface: 3-year results of a prospective study in the posterior mandible. J. Periodontol. 2010 Jun;81(6):809–18.