ジルコニアセラミック・レストレーションの長期予後(2)

 昨日はジルコニアセラミック・レストレーションの7年間の良好な長期予後を報告した文献を紹介した。その5年生存率(5年間トラブルを起こさず存在している確率)はインプラントで98.3%、天然歯で97.3%という非常に良いものだった。今日は、同様の報告で、少し低い成功率の文献を紹介する。後者のものでは、ジルコニア・レストレーション(ジルコニアをベースとしてレイヤリングセラミックでカバーしたもの)の3-5年の破折率は6-15%であるのに対し、従来のセラモメタル・レストレーションのそれは4-10%であり、破折率が従来のセラモメタル・レストレーションよりも高いことを報告している(1)。

 自分の臨床実感も後者のものに一致しており、いわゆるジルコニアボンドと呼ばれるレストレーションは、よくチップするように思う。レイヤリングセラミックの一部がジルコニアフレームから剥離するトラブルを何度も経験しており、今では自分の臨床の中からジルコニアボンドは消えている。後者の報告は文献レビューであり、複数の報告者のデータの総括であるから、歯科医やテクニシャンの臨床精度に差があることが想像される。多くのデータの中には必ずしも卓越した術者やテクニシャンによるものだけではないものも含まれているならば、後者のものこそ現実的な評価として受け止めていいのかもしれない。

 さて、ジルコニア冠はレイヤリングセラミックとボンディングするとあまりよくないのだが、ジルコニアフルミリング冠ではどうだろう?ジルコニアは超硬く、単体で使用する分にはおそらく冠そのもののフラクチャーはないだろう。あるとしたら、対合や支台歯の破折、あるいは歯槽骨の吸収だが、自分の直観では、咬合調整を完璧に行っておけばそういったことは起こらないのではないかと思う。支台歯に加わる力を完璧にコントロールできれば、支台歯をコーピングするマテリアルの硬さは支台歯や歯周組織に伝達される力を著しく修飾するようなことはないと思うのだが。この点については、今後、ジルコニアフルミリングクラウンの長期予後報告を待ちたい。

 

 

参考文献:

(1)Zirconia in fixed prosthesis. A literature review. Agustín-Panadero R, Román-Rodríguez JL, Ferreiroa A, Solá-Ruíz MF, Fons-Font A. J Clin Exp Dent. 2014 Feb 1;6(1):e66-73. doi: 10.4317/jced.51304. eCollection 2014.