マイクロスコープ

 今日、高松市歯科医師会の学術講演会でマイクロスコープの有意義な話を聞いてきたので、今日のテーマはマイクロスコープにしよう。本日の講師は磯崎裕騎先生。彼はわれわれの歯科医師会の会員であるが、Dr.ビーチから直接薫陶を受け、現在PD(Proprioceptive deriviation固有感覚由来)システムとして知られる人間の生理的感覚に根差した合理的な身体の動きを診療のベースとする歯科診療哲学の伝道者として全国を講演しておられる多忙でご高名な先生である。その磯崎先生のマイクロスコープ入門セミナーを地元高松で半日コースで聴講できたのはラッキーといえる。

 さて、マイクロに関しては、ある疑問があったのだが、本日の講演を聞いてその疑問は解消された。当初の疑問とは、マイクロは大きな顕微鏡なので一度、患者さんの口の上に設定すると、治療中に対物レンズの位置をそうしょっちゅは変えることはできないはずで、そうであるなら対物レンズをあまり動かす必要のないエンドには適応できるが、支台歯形成などの補綴治療や歯周外科手術、レジン充填などの保存修復、エンドサージェリーなどは見たい方向は一方向だけではなく、対象を360度ぐるぐる四方から観察する必要があるのだが、その場合は見たいところに術者の体位を移動させれば見にいけるガリレアンルーペの方が機動力というか、見たいところに直観的な体の使い方でアクセス出来るわけだから、マイクロは歯科臨床のあらゆる局面で活用することが少々難しいのでは?という懸念であった。

 しかし、その懸念は誤りだった。結論から言うと、マイクロスコープ下でも削りたい歯を360度ぐるり四方から見渡すことは可能であることがわかった。それがPDシステムの真骨頂で、デンタルミラーをうまく指先でコントロールすることで、すべての見たい面をミラーで見ることが可能なのだ。この時、上体は動かさないので対物レンズはそのままで、ミラーの位置だけ変えることで目は同一方向から対象周囲を観察し、歯のすべての面をプレパレーション出来る。つまり、ミラーテクニックをマスターすればマイクロは難無く、歯科臨床のあらゆる局面で利用可能ということである。つまり、PDシステムを取り入れればマイクロスコープ歯科臨床の多くの局面で活用出来るのである。

 マイクロスコープは20倍まで拡大可能だが,ガリレアンルーペはせいぜい8倍、マックス10倍であるから、やはりマイクロスコープの方が大きく拡大して見ることができる。しかも、マイクロは優れた光学レンズであるアポクロマートレンズを使用していれば、ガリレアンルーペより明るく、シャープな画像が見れる。拡大率が高いことは精度につながるので、やはりマイクロはルーペよりも優れている。

 というわけで、マイクロスコープは、近い将来、是非診療室に備えなければならない必須のツールと認識した。

 

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