歯肉炎

「歯肉炎」は、歯周病の初期段階です🔰

歯周病は、歯肉炎と歯周炎の総称ということをご存知ですか?実は、歯周病の初期段階を歯肉炎、進行すると歯周炎になっていきます。

今回は歯肉炎と歯周炎の違いについてご紹介します🎀

歯肉炎は歯肉に炎症が起きている状態のことです。

磨き残しなどが原因で、歯と歯ぐきの間などにプラークが溜まり、歯ぐきに炎症が起きている状態です。歯ぐきの縁が赤みを帯び、腫れてブヨブヨした感じになり、歯周ポケットができつつありますが、この段階ならば、適切な治療で元の歯ぐきに戻すことが可能です😄

炎症がすすむと、あごの骨や歯根膜も破壊されていき、いくら治療をしても元には戻せません💧

歯周ポケットはさらに深くなり、さらにプラークが住みやすい場所を作ります。歯根の露出により知覚過敏を起こすこともあります。

さらに進行するとあごの骨がさらに溶けて歯がグラグラし、食べるのが不自由になります。

痛みをともなう腫れが出たり、歯ぐきから膿が出るなどを繰り返しながら、最終的に歯は抜け落ちてしまいます⚡

歯肉炎の段階で食い止めることがいかに大切かお分かりいただけたと思います。

歯周病が進行する前に歯科で、定期的にメンテナンスを受けましょうね🌺

トリートメントコーディネーター 溝渕

 

歯周ポケットについて

 

歯周病は、歯を支えている組織が壊されていく病気で、虫歯に比べて痛みを感じにくいため、知らないうちに重症化することが多い病気です😰

そんな歯周病で、よく聞く言葉が「歯周ポケット」です。これは、歯と歯ぐきの境目の溝のことをいい、深いほど汚れがたまりやすく炎症を起こしやすくなり、歯周病の進行具合の目安になっています⚠

■3mm以内・・・健康な状態でも1~2ミリ程度の溝があります。3mm程度になってくると、歯肉炎(歯ぐきのみに炎症を起こしている状態)が考えられます。
■3mm~4mm・・・歯肉炎が進行し、歯周炎(炎症が広がりあごの骨を溶かしている状態)に。
歯みがきの時に出血したり、歯ぐきが腫れぼったく感じる症状がみられます。
■5~7mm・・・中等度~重度歯周炎。前段階がさらに進行してあごの骨が半分程度溶け、歯がぐらついたり歯ぐきから膿が出ることも。歯科医院で歯周ポケット内の歯石を取ってもらう必要があります。
■7mm以上・・・あごの骨が2/3以上溶けて、さらに歯がぐらつきます。放置すると歯が抜け落ちたり、回復の見込みがなく抜歯となるケースもあります。

歯周病は悪化すると確実に歯を失う怖い病気です。予防するにはセルフケアに加えて定期的に歯科医院でメンテナンスすることがとても大切です。なんでも美味しく食べられる健康なお口を維持するために一緒にお口のケアをしていきましょう🌷

トリートメントコーディネーター 溝渕

スタッフブログはじめました!

こんにちは!
このたびスタッフブログ始めました😍🌹

院長だけでなく、スタッフもブログを更新していきますので、よろしくお願いします✨

最近暑いなぁと思う日が増えてきましたね❗️
夏が近づく気配にウキウキしております🌻🌞🎶

そしていよいよ5月号の院内新聞「歯っぴータイムズ」も、もうすぐ発行です!
お楽しみに🎁💓
プレゼントのご応募いっぱいお待ちしております🐥

そしてそして!出会いの季節です🌿
この4月から、新人衛生士さんの井戸さんが入職してくれました🤭💐

 

衛生士さんとしてこれからバリバリ活躍していただけるよう願っております!
みなさんも御贔屓によろしくお願いいたします💕

 

トリートメントコーディネーター 松本

デジタルデンティストリー・セミナー

 本日は、サンポート高松に於いて玉井歯科商店主催で開催された”デジタルデンティストリー・ソリューションセミナー”というのに参加して来た。講師は札幌の市岡千春先生、内容はセレックの実症例、セレックとCTの融合によるインプラント埋入におけるポジショニングの決定およびサージカルガイドの作成、セレックを用いたインプラント上部に接続するアバットメントの作製法や、上部冠の作製をセレックコネクトを用いて外部ラボとコラボする方法、などだ。アナログで、いかなる状況でもインプラントを埋入できるテクニックを持ち合わせているという前提で、やはりCTデータを使用して作製されたサージカルガイドはピンポイントでインプラントを埋入しなければならない場合には必要なものだ。

 興味深かった点は、インプラント上部に接続するアバットメントの設計と切り出しをセレックで行っている点だ。自分の臨床経験から、インプラント長期予後を決定するのはアバットメントが粘膜を貫通していく部分のカーブさせる度合いと、プラットフォームから上部冠マージンまでの距離であると感じている。その点、セレックとCTを癒合させるとCT画像上に軟組織の形態を反映させることが出来るので、インプラント補綴のキモといえるアバットメントから上部冠のエマ―ジェンスプロファイルをラボ任せでなく歯科医自身で決定し、制作できるところが、セレックでインプラント上部補綴を作製するメリットだ。これまで、インプラント補綴はラボ任せだったが、このキモの部分でラボと十分コミュニケーションをとる事が難しかった、その点、最重要の部分を自分が設計できることはデジタルデンティストリーの大変な長所であると思う。また、インプラント治療は経費率が高すぎて、よく考えてやらないと医院経営を危うくする可能性があると感じていたが、上部冠作製を院内ラボで歯科医自身が行うと、理にかなった形態を具備したアバットメントおよび上部セラミック冠がペイシャントフレンドリーな価格で提供することが可能となり、これは歯科医院にとっても患者さんにとっても良いことだろう。

 というわけで、当面、セレックとCTとの融合による恩恵を研究していきたい。

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咬み合わせとブラキシズム

咬み合わせと健康との関連性を考える上で、ブラキシズムは極めて重要な要因だ。「ブラキシズム」とは、「食いしばりや歯ぎしり、不随意の下顎運動を特徴とする反復性の咀嚼筋活動」と定義され、睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムに分けて考えられている。睡眠時ブラキシズムは睡眠中の歯ぎしりや咬みしめの総称であり、覚醒時ブラキシズムは、パラファンクション(非機能的なもの)として習慣性咬みしめ、口腔習癖、歯の接触癖(Tooth contacting habit)などさまざまのものが含まれる(1、2、3) 。
 
ブラキシズムの成因として、以前は不適切な咬み合わせがブラキシズムを誘発すると考えられていたが、現在では、多くの研究結果から歯根膜感覚によりブラキシズムが生ずるとする末梢説はほぼ否定されている。わかりやすく言えば、不適切な咬み合わせがブラキシズムを発生させるとは考えられていない(4)。
 
現在では、口腔顔面形態と睡眠時ブラキシズムとの間に相関関係がないこと、また無歯顎の被験者でも睡眠時にブラキシズム様の咀嚼筋活動のリズミックナな緊張が起ることより、その機構は未だ十分解明されているとは言えないが、様々な要因が複雑に関与して中枢神経系に働き、ブラキシズムが起こると考えられている(5)。中でもストレスの関与は注目に値する。最近、不安障害であるパニック障害やPTSD( Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)において健常者より低レベルであることが知られている抑制性神経伝達物質GABA(ガンマーアミノ酪酸)が、ブラキシズムをする人においてもやはり低レベルであることが報告されている。これは、不安やうつといった精神的要素がブラキシズムの発生要因として大きく関与していることを示唆しており、興味深い(6)。
 
ブラキシズムは顎口腔系に様々な悪影響を及ぼすことが知られている。歯に対しては、咬耗、楔状欠損、破折、歯周組織に対しては、咬合性外傷、不快感をもたらすことがあり、顎関節に対しては、外傷性の変化、疼痛をひきおこすとされている。また、咀嚼筋の筋疲労、疼痛、筋肥大や顎骨の肥大、ひいては補綴物の破壊を生じることもある(7、8)。さらに、それ以外に、起床時の不快感、家族の不眠、筋収縮性の緊張型頭痛や顔面痛を生じさせることもある。
 
ここで重要なことは、顎口腔系の過剰な筋緊張とそれに引き続いて起こる口腔破壊の主な原因はブラキシズムであることだ。さらに、顎口腔系の過剰な筋緊張は、頸部の筋肉の過剰な緊張と、後述するようにそれが、頭痛、腰痛、関節痛、等の慢性疼痛につながる可能性があることを考えると、ブラキシズムを、唯一、管理できる立場にある歯科医の責務は極めて重大だ。
 
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Fig.1  ブラキシズムにより発生した歯の摩耗.
 
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Fig.2 ブラキシズムによる修復物の破折.
 
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Fig.3  ブラキシズムによる歯の破折.  FIg.1,2,3は文献(8)より引用.
 
参考文献:

1.    Bruxism defined and graded: an international consensus. Lobbezoo F, Ahlberg J, Glaros AG, Kato T, Koyano K, Lavigne GJ, de Leeuw R,            Manfredini D, Svensson P, Winocur E.  J Oral Rehabil. 2013 Jan;40(1):2-4.

2.    Bruxism physiology and pathology: an overview for clinicians. Lavigne GJ, Khoury S, Abe S, Yamaguchi T, Raphael K. J Oral Rehabil. 2008        Jul;35(7):476-494.

3.    顎機能障害の診断と発症要因を考慮に入れた治療―パラファンクションと顎機能障害の発生―. 馬場一美,小野康寛,西山 曉. 日補綴会誌                   2009;1:7-12,

4.    Are bruxism and the bite causally related?. Lobbezoo F, Ahlberg J, Manfredini D, Winocur E. J Oral Rehabil. 2012 Jul;39(7):489-501.

5.    Bruxism: Conceptual discussion and review. Murali RV, Rangarajan P, Mounissamy A. J Pharm Bioallied Sci. 2015 Apr;7(Suppl 1):S265-270.

6.    GABA and glutamate levels in occlusal splint-wearing males with possible bruxism. Dharmadhikari S, Romito LM, Dzemidzic M, Dydak U, Xu J,        Bodkin CL, Manchanda S, Byrd KE. Arch Oral Biol. 2015 Jul;60(7):1021-1029.

7.   佐藤貞夫, 玉置勝司, 榊原功二. ブラキシズムの臨床 その発生要因と臨床的対応: 2-12.東京.クインテッセンス出版.2009.

8.   Gross M. The science and art of occlusion and oral rehabilitation:75-88. London. Quintessence Publishing.  2015.

咬み合わせと姿勢

近年、咬合や咀嚼を担う下顎運動の力学的解析の対象は、顎関節や頭蓋骨だけでなく、頸椎や、全身の姿勢を決定する脊椎全体にも向けられてきている(1,2,3)。

 
なぜなら、 咬み合わせと全身の姿勢には関連性があることは従来から推察されていたのだが、それを科学的に検証するためには、下顎運動の解析の対象を顎頭蓋部に限らず、脊椎全体に広げる必要があるからだ。
 
その結果、咬み合わせの不正は、頸椎から胸椎、そして腰椎へと脊椎全体に影響を及ぼすことが、科学的根拠を伴って報告され続けている。

たとえば、片側で咬んだ場合、頭部は作業側(咬んだ側)に傾斜する(4)。この時、サルを用いた実験では、第一頸椎、第二頸椎、第三頸椎の作業側、非作業側の各計測点で、それぞれ異なる応力が発生して、それぞれに異なる変形が生じていることが、頸椎表面に歪みを検知するセンサーを貼る測定法で明らかにされている(5)。

また、ラットを用いた実験では、片側で咀嚼させ続けると、脊椎全体の弯曲が変化することが確かめられている。つまり、咬む力は脊椎全体に影響を及ぼすが、それに左右差がある場合には脊椎のアライメントに歪みが生じる、という事実が確認されたのだ。このような実験は倫理的に人間では行い難いので、動物を用いた検証になる(6)。

さらに、咬む力の左右的アンバランスが脊椎全体のアライメントを変化させることが、実験用に制作された人の脊椎モデルにおける有限要素法解析においても確認されている(7)。

脊椎モデルにおいて、咬む力は第一頸椎から第7頸椎までの各レベルの測定点で異なる応力を発生させるが、その結果、咬み力は頸椎の走行や位置を変化させる。たとえば、咬合平面(下顎中切歯の尖端と左右下顎第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂の3点を結んだ平面)が水平の場合、左側で咬むと頸椎が右側にずれる。このとき、咬合平面が左下方に傾斜していると頸椎は逆に左側にずれる。
 
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Fig. 1   4つの有限要素法モデル  文献(7)より引用。 の両側の上下方向の矢印は咀嚼筋の咬合力を表す。

 

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Fig.2  頸椎の有限要素法モデルにおける応力分布図。  ModelA は左右対称的に応力が分布している。ModelB3~第7頸椎の左側に高い応力が発生している。ModelCは第3~第7頸椎の右側に高い応力が発生している。ModelDは第4および第5頸椎においてわずかに左右差が認められる。 

 

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Fig.3  偏位する椎。ModelAは偏位していない。ModeBは右側に、ModelCは左側に偏位している。ModelDはわずかに右側に偏位する。

 

以上のデータは、顎口腔系の筋肉の拮抗的な作用により、咬合平面の側方傾斜とそれに加わる咬合力の左右差は、頸椎の偏位を起こすことを示している。すなわち、咬合平面が水平の場合、左側で強く噛むと頸椎は右側に偏位し、咬合平面が傾斜している場合は、両側に同程度に咬合力が加わった場合は、咬合平面が下方に傾斜している側に頸椎が偏位する。
 

 

そして、下顎が偏位している場合は、咬合力の左右差や咬合平面の傾斜が頸椎の偏位にあまりつながらない。このことは、咬合力や咬合平面のアンバランスが姿勢に直接大きく影響しないように、下顎が代償的に偏位することで姿勢を制御している可能性を示唆している(7)。
 
ところで人の脊柱側弯症の発症率は、下顎が偏位している人において有意に高い事実がある(8)。
 
前述の動物や有限要素法解析を用いて得られた咬合力が頸椎、そして脊椎全体のアライメントを変化させることを示す実験データは、下顎の偏位が脊柱側弯症を引き起こす有力な因子である可能性を示唆している。
 
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Fig.4 典型的な下顎偏位患者  頭部X線写真において、下顎骨は右側に偏位し、右側の下顎枝(下顎骨の垂直部分)は明らかに短縮している。文献(8)より引用。

 

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Fig. 5 健常者

 

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Fig. 6  下顎偏位患者の頭部X線写真  A,B:下眼窩裂、C:オトガイ正中点。ABを結ぶ線を基準にすると咬合平面は傾斜し、下顎は左方へ偏位している。

 

 

下顎偏位患者を正面から観察すると、脊椎はS字状にカーブしている。そして、下顎の偏位した方向と反対側に頸椎が偏位し、下顎の偏位と同側に脊椎が側弯している(Fig.13,14)。
 
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Fig.7  脊椎全体のX線写真。下顎偏位患者の脊椎全体X線写真  D:第7頸椎の正中点、 E:恥骨結合の正中点、F,G: 肩峰 H,I:頸椎および胸椎における側弯が最も顕著である点

 

また、矢状面(しじょうめん=体を左右に等しく半分に分ける面)における咬合平面の傾斜も、脊椎アライメントに重大に影響する。
 
骨格性のアングル二級の不正咬合(上顎前突)においては、後退した下顎が頭蓋と頸椎との関係性に影響し、脊椎の弯曲傾向が強くなる傾向が報告されている(3,4,9,10,11)。
 

 

また、上顎前突(アングル二級)の咬み合わせは頭位を前方に偏位させる傾向(フォアーヘッドポスチャー)があることが知られており(14)、この姿勢は頸部の筋肉を緊張させ、頭痛や肩こりを起こす原因となる。

 

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Fig.8  正常な脊椎、下肢、頭部の関連性  Fig.16 障害された脊椎、下肢、頭部の関連性。

 

 正常な咬み合わせと脊椎および下肢のアライメント(左)。不正な咬み合わせは(上顎前突=アングル二級)、脊椎と下肢のアライメントの変化を伴う(右)。

 文献(14)より引用。

 

ところで、脊椎の過剰な弯曲の原因は咬み合わせだけではない。脊椎の下方に位置する骨盤の形態角の変化は、上方の腰椎の前弯、胸椎の後弯の程度と連動しており、脊椎の下方に存在する原因により頸椎の弯曲が変化する可能性も報告されている(12)。
 
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Fig.9 脊椎は全体が一つのユニットとして機能する。頸部の弯曲をしめすパラメーターは、下方のパラメーターに影響し、また下方のパラメーターによ影響される。 CL=cervical lordosis頸椎前弯,    COG=center of gravity重心, FS=femoral shaft  大腿骨骨幹部,  PI=pelvic incidence 骨盤形態角,    PT= pelvic tilt 骨盤傾斜角,  SS=sacral slope仙骨上縁と水平線とのなす角 文献(12)より引用。

 

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Fig.10  脊椎の正しいアライメントは良い姿勢を作り、不良なアライメントは代償的なメカニズムにより頸椎のパラメーターを変化させる.骨盤傾斜角の増加は、頸椎の後弯によっても、脊椎全体の不正なアライメントによっても起こるが、頸椎の過剰な後弯によっておこる骨盤傾斜角の増加は腰椎の過剰な前弯を伴う。A: 正常 B: 過剰な頸椎の後弯。腰椎の過剰な前弯と骨盤傾斜角の増加を伴う。C: 過剰な頸椎の前弯。骨盤傾斜角の増大を伴う。 文献(12)より引用。

 

要するに脊椎は全体が一つのユニットとして機能しており、上方のアライメントの異常は下方にも異常を引き起こし、下方のアライメントの異常は上方にも異常を引き起こす(Fig. 18)。
 
実際、脊椎の弯曲は頸椎から胸椎、腰椎、仙椎までの各部分が有機的に連携して成立している。頸椎の過剰な弯曲と共に脊椎全体の弯曲の異常を呈する患者に対して、腰椎レベルに骨切除を施して脊椎の弯曲を矯正したところ、頸椎のアライメントも自然に改善されたとする報告がある(13)。
 
参考文献:

1.   Dental occlusion and postural control in adults. Tardieu C, Dumitrescu M, Giraudeau A, Blanc JL, Cheynet F, Borel L.  Neurosci Lett. 2009   Jan 30;450(2):221-224.

2.   Dental occlusion and body posture: a surface EMG study. Bergamini M1, Pierleoni F, Gizdulich A, Bergamini C. Cranio. 2008 Jan;26(1):25-32.

3.   Examination of the relationship between mandibular position and body posture. Sakaguchi K, Mehta NR, Abdallah EF, Forgione AG, Hirayama   H, Kawasaki T, Yokoyama A. Cranio. 2007 Oct;25(4):237-249.

4.   Occlusal support and head posture. Kibana Y, Ishijima T, Hirai T.  J Oral Rehabil. 2002 Jan;29(1):58-63.

5.   井上 曉, 川本達雄. 片側で咬合した時の左右椎弓板の力学的反応.歯科医学. 2000. 63(2): 113-128.

6.    The effect of dental occlusal disturbances on the curvature of the vertebral spine in rats. Ramirez-Yanez GO, Mehta L, Mehta NR. Cranio.    2015 Jul;33(3):217-227.

7.    The effect of occlusal alteration and masticatory imbalance on the cervical spine. Shimazaki T, Motoyoshi M, Hosoi K, Namura S.  Eur J    Orthod. 2003 Oct;25(5):457-463.

8.     A correlational study of scoliosis and trunk balance in adult patients with mandibulardeviation. Zhou S1, Yan J, Da H, Yang Y, Wang N, Wang   W, Ding Y, Sun S. PLoS One. 2013;8(3):e59929. doi: 10.1371/journal.pone.0059929. Epub 2013 Mar 29.

9.     The relationship between the stomatognathic system and body posture. Cuccia A, Caradonna C. Clinics (Sao Paulo). 2009;64(1):61-66.

10.    Head posture and malocclusions. Solow B, Sonnesen L. Eur J Orthod. 1998 Dec;20(6):685-693.

11.    Cervical column morphology related to head posture, cranial base angle,and condylarmalformation. Sonnesen L, Pedersen CE, Kjaer I. Eur   J Orthod. 2007 Aug;29(4):398-403.

12.    Cervical spine alignment, sagittal deformity, and clinical implications: a review. Scheer JK, Tang JA, Smith JS, Acosta FL Jr, Protopsaltis TS,   Blondel B, Bess S, Shaffrey CI, Deviren V, Lafage V, Schwab F,Ames CP; International Spine Study Group. J Neurosurg Spine. 2013      Aug;19(2):141-159.

13.    Spontaneous improvement of cervical alignment after correction of global sagittalbalance following pedicle subtraction osteotomy.Smith JS1,    Shaffrey CI, Lafage V, Blondel B, Schwab F, Hostin R, Hart R, O'Shaughnessy B, Bess S, Hu SS, Deviren V, Ames CP; International Spine    Study Group. J Neurosurg Spine. 2012 Oct;17(4):300-307.

14   The neuromuscular approach towards interdisciplinary cooperation in medicine. Yurchenko M, Hubálková H, Klepáček I, Machoň V, Mazánek        J. Int Dent J. 2014 Feb;64(1):12-19. 

 

咬み合わせと顎関節症

顎関節症とは、1)口を大きく開けられない 2)口を開けようとしたら顎関節や周囲の筋肉が痛む 3)口を開け閉めすると耳の穴の前でカクンと音がする、といった3つの症状のうち、1つ以上を伴う顎の機能障害をいいます。
 
以前は、顎関節症の原因は、咬み合わせの悪さが原因と考えられていましたが、現在では咬み合わせの悪さだけが原因ではなく、その原因に多くの因子が関与しているとする「他因子病因説」が有力です。他因子として、顎関節や顎の筋肉の脆弱性、不良な咬み合わせ、精神的緊張や不安、抑うつなどの精神的要因、外傷要因、TCH(Tooth Contacting Habit、上下歯列接触癖 )や頬杖、うつぶせ読書などの日常的習癖、硬固物咀嚼や片咀嚼などの食事習慣、横向き寝や手枕、腕枕などの睡眠姿勢、ブラキシズム(食いしばり、歯ぎしり)、などがあげられます(1)。
 
咬み合わせと顎関節症との関係については、現在では咬み合わせが顎関節症発症の主な原因となることは否定されており、1996年に開催されたいわゆるNIHコンセンサスにおいても、「咬合が顎関節症の明らかな原因となるというエビデンスはない」という共通認識が採択されています(2)。
 
しかしながら、それ以降も咬み合わせが顎関節症の発症に関与する可能性を支持する報告が後を絶たず、実際、顎関節症の患者さんには不正咬合が正常の人よりも多くの頻度で認められます。したがって、現在も強い興味をもってNIHコンセンサスの真偽が検討され続けています。

したがって、現段階では必ずしも咬み合わせが顎関節症の原因として完全否定されたわけでなく、発症にかかわる多くの因子の中の一つに過ぎない、という位置づけです。

そして、これらの中でも特に重要なものは、パラファンクション(非機能運動)であるTCHやブラキシズム、そして身体的、精神的ストレスであろうと考えられています(3)。TCHとは、覚醒時における機能時以外の長時間の歯の接触であり、必ずしも強力な食いしばりのみを意味するのではなく、軽微な歯の接触も含めます。
 
咬み合わせと顎関節症との関係を考えるとき、ポイントは「咬む」という行為が重要な発症因子となっていることです。上下の歯列の咬合接触様式はあまり問題ではなく、上下の歯列を強くあてる、あるいは咬み締める行為そのものが顎の筋肉の過剰な緊張を引き起こし、問題となります。この意味で、咬み合わせは顎関節症の成因と深く関係しています。
 
顎関節症の筋肉の痛みは、筋肉の酷使による過剰な緊張から起こります。咬み合わせに関与する筋肉は咀嚼筋と呼ばれ、下顎骨と頭蓋骨や舌骨とをつないでおり、これらが協調的に働くことで複雑な咀嚼運動を作り出しています(Fig.1~11).
 
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Fig.1  顎関節と歯.上顎に対する下顎の位置は,前方は歯,後方は顎関節により決定される.

 

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Fig.2 咬筋.下顎骨外側と頬骨とをつなぎ,口を閉じる筋.強力な力を出す.

 

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Fig.3  側頭筋.下顎骨上方の筋突起と側頭骨とをつなぐ.口を閉じながら,下顎を上方,後上方,後方に移動させる筋.

 

 
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Fig.4  内側翼突筋.頭蓋骨下面と下顎骨内面とをつなぐ.口を閉じる筋.

 

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fig.5  顎二腹筋.舌骨の前後で前腹と後腹に分かれ,滑車として作用する.

 

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Fig.6   舌骨下方の筋群の収縮と同時の顎二腹筋の収縮で,下顎は閉口する

 

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Fig. 7  外側翼突筋.下顎骨と上顎骨後方をつなぐ.

 

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Fig.8 外側翼突筋の収縮により,下顎は前進する.

 

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Fig.9  下方から見た外側翼突筋の走行.左側の外側翼突筋の収縮は下顎を右方へ,右側の筋の収縮は下顎を左方へ,両側の筋の収縮は下顎を前進させる.

 

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Fig.10  下顎が右側方に運動するとき,左の下顎頭は関節の前癖のスロープを超えて関節窩から脱出し,前下方へ移動する.この時,左下顎頭は回転と前進を同時に行う.

 

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Fig.11   下顎の右側方運動.右が咬む側の場合,右の下顎頭は関節窩にとどまるが,左の下顎頭は関節窩を超え,前下内方へ滑走する.歯をこすりながら右に下顎を移動させる場合,前方の歯は犬歯がガイドすることが望ましい.(犬歯誘導).この様な歯の接触様式は,歯ぎしりをする場合に犬歯以外の歯を守ると考えられている.

下顎骨を運動させて上顎との咬みあわせに関与する、咀嚼筋群と呼ばれる筋肉だけでもこれだけ多く存在します。さらに、この咀嚼筋群は、頸部の筋肉群とも密接に連動しています(4、5)。と、同時に頭蓋と頸部との連携を担う部位であることから、頭位を決定する要素でもあります。
 
さらに、咬み合わせと顎関節症との関係に再び戻ると、咬み合わせの様式が完全に否定されたわけではなく、ある種の咬み合わせの様式の関与の可能性も、一部、残されています(6,7,8)。下顎の側方運動時に犬歯のガイドがない場合は顎関節症を起こしやすいとするコホート研究があります。犬歯のガイドがないと咬合干渉(こうごうかんしょう)が起るのですが、それがどの程度、重要にかかわっているかは議論の余地があるものの、咬合干渉が顎の筋肉の過緊張を起こし、顎関節症を発症させる可能性が残っています。

また、最近、ラットを用いた実験的研究で、咬合干渉が実際に咀嚼筋の過緊張に起因する痛みを発現させる事実が報告されています。この研究においては、侵害受容性(しんがいじゅようせい)の痛みの発生プロセスに重大に関与するとされるP2X3受容体が中枢神経系の三叉神経尾側亜核で活性化されている事実が、分子生物学的手法により確認されていますが、このことは咬合干渉が実際に中枢神経に痛みを認識させていることを示しており、咬合と顎関節症の関係を考えるにあたって興味深いところです(9)。 

TCHの治療法は、自らが自分に有害な行動を無意識に行っていることを認識し、その行動を変容するために行動療法を実践します。具体的には、「歯を離してリラックス」などと書いたメモ用紙を身の回りに置き、そのメモ用紙に目がいった場合には、もし歯をあてている場合には意識的に離すように、繰り返し自分に言い聞かし、実践することの反復で歯をあてないように行動を変化させます。
 
また、顎関節症の治療は、その本質が筋緊張にある以上、筋のリラックスを図ることが治療の本質になります。その、方法として関節可動化訓練や筋伸展訓練、開口維持訓練などの運動療法が有効であり、またストレスを取り除くための顎関節症の病態説明や治療法の説明は欠かせません。従来、盛んにおこなわれていたスプリント療法は積極的に推奨されてはおらず、スプリント療法とそれを用いない心理社会的介入(認知行動療法やその他の心理学的アプローチ)の治療成績に関するシステマティックレビューでは、両者に有意差はないと報告されています(10)。
 
本稿で重要なことは、顎関節症は生活の質を大きく低下させる疾患で、その対応が重要である点です。発症の主原因がTCHやブラキシズムであるにせよ、咬み締めるということの重大なリスクを患者に効果的に伝えられる位置にいるのは、口腔を管理する歯科医師しかいないことです。 
 
 
参考文献
  1. 木野孔司.TCHのコントロールで治す顎関節症:22-23.東京.医歯薬出版.2013.
  2. National Institutes of Health Technology Assessment Conference Statement. Management of temporomandibular disorders. J Am Dent Assoc 1996;127:1595-1606.
  3. 顎機能障害の診断と発症原因を考慮に入れた治療―パラファンクションと顎機能障害の発症―. 馬場一美, 小野康寛, 西山 暁. 日補綴会誌 2009;1:7-12.
  4. The relationship between dental occlusion/temporomandibular joint status and generalbody health: part 1. Dental occlusion and TMJ status exert an influence on general bodyhealth. Moon HJ1Lee YK. J Altern Complement Med. 2011 Nov;17(11):995-1000.
  5. Correlation between TMD and cervical spine pain and mobility: is the whole bodybalance TMJ related? Walczyńska-Dragon KBaron SNitecka-Buchta ATkacz E. Biomed Res Int. 2014;2014:582414. Epub 2014 Jun 19.
  6. 顎機能障害の診断と発症原因を考慮に入れた治療―発症原因をコホート研究から紐解く―. 藤澤政紀.日補綴会誌 2009;1:1-6.
  7. The difficult relationship between occlusal interferences and temporomandibular disorder – insights from animal and human experimental studies.Xie Q, Li X, Xu X.  J Oral Rehabil. 2013 Apr;40(4):279-295.
  8. Prevalence and association of headaches, temporomandibular joint disorders, and occlusal interferences.  Troeltzsch M, Troeltzsch M, Cronin RJ, Brodine AH, Frankenberger R, Messlinger K. J Prosthet Dent. 2011 Jun;105(6):410-417.
  9.        Association of occlusal interference-induced masseter muscle hyperalgesia and P2X3 receptors in the trigeminal subnucleus caudalis and midbrain periaqueductal gray. Sun SQi DYang YJi PKong JWu Q. Neuroreport. 2016 Mar 2;27(4):277-283.
  10. A systematic review and meta-analysis of usual treatment versus psychosocialinterventions in the treatment of myofascial temporomandibular disorder pain. Roldán-BarrazaCJanko SVillanueva JAraya ILauer HC. J Oral Facial Pain Headache. 2014 Summer;28(3):205-222.

 

 
 

オンラインストア

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 便利な世の中になったものだ.インプラント治療に必要なパーツの種類はものすごく数が多いので,以前なら正確を期すために,そのリストをPCで作製し,それをインプラントメーカーの配送部にFAXしていたのだが,最近では,これらはオンラインストアで入手できるようになった.

 今回,当院では使用していないノーベルバイオケア社のインプラントの上部構造をやり替える必要があるケースに遭遇し,パーツの購入をオンラインストアで試みた.ノーベルバイオケア社のオンラインストアは,その商品のラインナップがメチャメチャ豊富で,なかなか目的のパーツにたどり着けない.なにせ,インプラントの種類だけでも列記すると,

ブローネマルクシステム マークⅢ,ブローネマルクシステム マークⅢグルービー,ブローネマルクシステム マークⅢショーティー,ブローネマルクシステム マークⅣ,ノーベルスピーディー・グルービー,ノーベルスピーディー・ショーティー,ノーベルアクティブ,ノーベルテーパードCC,ノーベルテーパードCCPMC, リプレイスセレクト テーパード,ノーベルセレクトテーパード,ノーベルリプレイス・テーパード,ノーベルリプレイスPSインプラント,リプレイスセレクト・ストレート/リプレイスセレクトTC,ノーベルリプレイス・ストレート,ノーベルスピーディーリプレイス,などなど,笑ってしまうほどややこしいのだ(ここまで,HPを見ながら必死で書き写した).

 

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 しかしながら,コンピューターの威力は絶大で,正確にクリックさえすれば,間違いなくその商品が届く.クリック操作で決済できるシステムは,基本的にはよい.昔のように,係員が勘違いしてはいけないからと,こちらが正確にリストを創る手間が省けるからだ.そして,最近の物流業界はものすごく進化していて,発注したら翌日にはもう商品が届いたりしている.

 こういったIT技術の導入は時代の流れであって,もはや逆らえず,その良い面を評価し,積極的に活用して行きたいと思っている.それにしても,ノーベルバイオケア社の商品って品数がメチャクチャ多いな.

 

本日は,80歳女性の左下67インプラントにジルコニアセラミック冠を装着しました.

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右写真は,80歳女性の左下67相当部に植立されたストローマンインプラントの上に,ソリッドアバットメントが接続された状態のものです.

 

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そのソリッドアバットメントの上に,ジルコニアセラミッククランを装着しました.

 

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80歳でも,全身状態は大変良好で,インプラントオペも何の問題もなく受けて頂いております.そういう方には,インプラントは,ご自分の歯と同様によく咬めるので,とてもよいものと思います.インプラント治療に必要なものはフィジカルの健全さで,実年齢とはあまり関係ありません

                                                                    

 

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左下5はオトガイ孔が存在していたので,インプラントを67に2本植立し,カンチレバーブリッジとしています.

 

 

 

本日は,左上1の抜歯,即時インプラント植立をしました.

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右デンタルX線写真で示す左上1は,歯根破折を認めるため,抜歯と決定しました.

先ず,周囲骨を挫滅させないように,注意深く歯根を抜歯.続いて,即時にインプラントを植立します.

抜歯後,即時インプラント植立のメリットは,良いポジションを確保し易いことです.

 

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 使用するインプラントは,ストローマンBLTインプラント.SLAactive, 径3.3長さ14mm,Loxolid です.抜歯窩の根尖相当部付近にエントリーポイントを設け,埋入窩洞を形成し,インプラントを通法に従って埋入します.埋入深度は,プラットフォームが歯肉縁下3.5mmとなるレベルまで埋めます.

 

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ほぼCT画像上のシュミレーションでイメージしたポジションどおりに埋入できました.

 

埋入後のデンタルX線写真

 

 

 

 

 

 

 

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オペ前のCT画像でシュミレーションされたインプラントポジション

 

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