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2013年9月

今日はインプラント学会2日目です。

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 2日目の午前は、3人のエキスパートの国内招待講演を聴講した。
 
   まず、一人目は中村社綱先生で、“前歯部審美領域のインプラント治療成功のためのポイントと将来展望”という演題で講演された。
 
   二人目は武田孝之先生で、「補綴的立場から見たインプラント治療の現状と将来」という演題の講演だった。インプラント治療を長期的に経過観察すれば、「異常な力」、「偏った力」の結果として起こる補綴的問題に遭遇する実例を多数紹介され、インプラント治療における“力の管理”、“力のもたらす生体および補綴物への影響に対する洞察力”の重要性を強調された。
 
 今回の学会のテーマが「より適切で確実なインプラント治療へ」とあるように、最新、最先端のカッティングエッジを追求するよりも、歯科医療の本質である、炎症と力の管理をしっかりと行うことが重要だと思った。具体的には細菌感染と真っ向から闘ったり、経年的に変化する咬み合わせをしっかりと観察し対応していく地味な医療が、結局、最も尊いのだ。
 
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 当然といえば当然だが、天然歯の病気である歯周病はしっかりとしたプロトコール下で管理されれば治癒し、そして予防も可能なことはすでに明白であるゆえ、インプラント周囲炎も理屈にかなう手当を治療後も継続すれば予防可能であり、また治癒させる事も可能なことは理論上確信していたが、船越先生の実績を伴う発表を聴き、歯周病の管理のできる良心的な歯科医のもとでインプラント治療がなされ、しっかりとしたアフターケアを受けることがインプラントの長期予後のために極めて重要であることを再認識させられた。埋入の本数だけを誇る打ちっぱなしのインプラント歯科医は、間もなくインプラント業界から消え去るだろう。 三人目は恩師であり、わが国屈指の歯周病専門医である船越栄次先生で、「歯周炎患者におけるインプラント治療のリスク回避」という演題の講演だった。最近のインプラント学会でのトピックスになっているように、インプラント周囲炎の罹患率はかなり高い(40%程度)ことがわかってきており、特に歯周病で歯を失った患者さんではその傾向が顕著であることが知られてきている昨今であるが、船越先生の講演では、インプラント治療に入る前に歯周病の治療を徹底的に行えば、インプラントの長期予後は良好であることが報告され、われわれを安心させてくれた。

 

 

 

今日は博多で開催された日本口腔インプラント学会に参加しました。

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  今回の日本口腔インプラント学会は「より適切で確実なインプラント治療へ」というテーマで福岡国際会議場と、それに隣接する福岡サンパレスホールで開催された。

会員が1万3千人を数える大学会なので、会場も広く、いろいろな会場で多くの一般講演、各種セミナー、ワールドサテライト(海外招待講演)、国内招待講演、ランチョンセミナー、テーブルクリニック、等が同時展開されるので、どれを聴こうかと迷う程内容が豊富で楽しい学会だった。  

 

 

 

 

 

 

 

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  初日の午前は、メインホールで行われた“臨床の疑問に答える”というテーマのセッションを午前9時から12時まで連続で聴講した。

なかでも歯科技工士である辻 貴裕氏の“デジタル技術を生かしたインプラント補綴設計から上部構造製作の実際”という演題は興味深かった。 
理想的なインプラントブリッジとしてチタンフレームにチタン専用セラミックを焼き付けたチタンセラミックブリッジが提案された。キャストの時代には考えられなかったデザインとマテリアルがCAD/CAMの普及と共に現実のものとなった。

 

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  当然、インプラント周囲炎の管理の観点から最近の主流となってきているスクリューリテイン方式が前提となるが、この方式の弱点であるスクリューホールが機能咬頭に設定される可能性を克服する方法として、インプラント植立手術以前のコンピューターによるシミュレーションサージェリーにおいて、テクニシャンと歯科医がコラボしてインプラントのプレイスメントを決定するやり方の提案は良いアイデアだと思った。コンピューターシミュレーションでは、インプラント植立以前の段階で最終補綴物の三次元形態がコンピューター画面上の口腔に反映され、機能咬頭を避ける位置にインプラントをプレイスすることも、慎重に位置決めすれば可能となるからだ。

 

 

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  スクリューホールが機能咬頭に来ない限り、スクリューリテイン方式はセメントリテイン方式に対して圧倒的に優位性を持つ。したがって、デンタルクリニックとデンタルラボが、同じシミュレーションソフトを共有するアイデアは非常に有用だと思う。そして、デジタル化が進む近未来では、実際そうなるだろう。

 

 

 

 

 

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  午後のセッションは海外招待講演を聴講した。最初の演者は著名なノースカロライナ大学のリンドン・クーパー先生で、“On the role of Monolithic Zirconia restorations in implant Prosthodontics”という演題の講演をされた。

魅力的素材であるジルコニアを用いた各種インプラント補綴が紹介されたが、チップしない補綴物が生体やインプラント体そのものに今後どのような影響を及ぼすのか演者も含めて誰も知らない、というコメントは印象的だった。

 

 

 

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 二人目の演者はベルン大学医学部 顎顔面外科講座教授 飯塚建行先生によるBRONJ(ビスホスホネート関連顎骨壊死) の治療に関する講演を興味深く聴講した。 
 

 

 

 

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  現在の我が国では、BRONJに対しては温存療法が主流で、積極的な外科治療は行わない傾向にある。
しかし、飯塚教授はBRONJに対しても積極的に外科治療を行い、口腔内に壊死した顎骨が露出する状態を漫然と放置していないようだ。飯塚教授の講演は何年か前に日本口腔外科学会の特別講演で聴講した経験があるが、非常にシャープな頭脳の持ち主で、クリヤーカットな講演内容であった記憶があるが、今回の講演も素晴らしかった。ビスホスホネートが投与されていても、骨のターンオーバー能にはかなりの個体差があるので、勝算があれば、徹底したインフェクションコントロールの下、外科手術に臨んで、よい成績をあげているようだ。決して流暢な英語ではないが、内容が非常に素晴らしく、日本人が行う英語講演とはかくあるべきだろう。
 夜は博多駅近くの居酒屋さんで夕食を取り、締めはやはり博多ラーメンだった。
 

 

今日は上顎前歯部の歯冠長延長術をしました。

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 不適合な冠を長い間入れていると、冠と支台歯との隙間から細菌が侵入して虫歯になります。

本日の症例もそのような不適合冠が口腔内に多く見られる症例です。 

 

 

 

 

 

 

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 歯肉縁下の虫歯の処理を正確に行うためには虫歯のレベルを歯肉縁上に位置させる必要があります。
そのために、適合の良い補綴物に交換するために冠を除去したあと、歯肉弁を剥離して僅かに根尖側に移動させるとともに、歯槽骨辺縁を少々削合し、歯冠長を延長する処置をしました。 

 

 

 

 

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  歯肉弁を復位後、緩く縫合して処置終了。

  術後2週間ほど創面をCoe-パックで圧接します。 

 

 

 

今日は右上顎5部にインプラントを植立しました。

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 オープンフラップで右上歯槽骨を露出しました。

歯槽骨幅がやや狭かったので、歯槽頂に音波サージェリーでスプリットを加えた後、径0.9mmのイニシャルバーで埋入窩を形成し、以後、オーギュメーターを用いて手圧で埋入窩の径を拡大していきます。

 

 

 

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 最後にアストラテックインプラント・osseospeedTX 径4.0 長さ9mmを植立しました。

この様なアダプテーションテクニックを使うと、適切な初期固定が得られます。

 

 

 

 

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  インプラント植立後のデンタルX線写真です。

 

 

 

 

 

 

今日は左下67部インプラントにプロビジョナルクラウンを装着しました。

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 左下67はインプラント植立後3カ月を経過したので、今回、プロビジョナルクラウン(仮のクラウン)を作製しました。

上顎は無歯顎で、現在仮義歯を装着していただいて、顎位を安定化させている途中です。左下大臼歯がないと完全に顎位を安定化させる事は困難なので、インプラントを植立し、その上に人工歯冠を被せました。
こうすることで、左右の大臼歯で咬めるようになり、初めて咬頭嵌合時の下顎の位置をしっかり安定化させられます。 

 

 

 

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 本日、ラボから届けられた左下67のプロビジョナルクラウンです。

 

 

 

 

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 インプラントに装着するプロビジョナルクラウンは右写真の様な構造をしています。

プロビジョナル冠の歯冠の中央にホールが設けられており、そのホールからスクリューをインプラント内部のネジ穴に絞め込み、プロビジョナル冠を串刺しにする格好で装着します。

 

 

 

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  右写真はプロビジョナル冠を装着する直前のインプラント周囲粘膜の状況です。

今後、ファイナルレストレーションが装着されても、長い期間の経過観察をする必要があるので、自分はインプラントの全症例で上部冠装着時のインプラント周囲粘膜の写真とデンタルX線写真を撮影しています。 

 

 

 

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  インプラント周囲に歯間ブラシが確実に挿入出来ることも重要なチェックポイントです。

 

 

 

 

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 プロビジョナル冠の装着により、本日から、左臼歯部が確実に咬合する様になりました。 

 

 

 

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  プロビジョナル冠が装着されているデンタルX線写真です。

インプラントにテンポラリーシリンダー(矢印)がスクリュー固定されており、そのテンポラリーシリンダーに対して接着された即重レジン(X線透過性のため見えません)に歯冠の形態を与えている構造がわかります。

 

 

今日は左下6にインプラントを植立しました。

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  本年4月9日、左下6を抜歯し、周囲骨の喪失を伴っていたので、抜歯窩にアパセラムAXとAFGを混和したものを補填し、CGFメンブレン5枚でカバーしました。

 

 

 

 

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 そのおよそ5カ月後の本日の同部の治癒状況です。

  歯槽の陥没や狭小化は見られません。

 

 

 

 

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  術前CT撮影で十分な骨量を確認出来たので、フラップレスでアストラテックosseospeed TX 4.0S 11mmを植立しました。

 

 

 

 

 

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 初期固定は良好でした。

頬側の付着歯肉がやや不足しているので、後日、前庭形成術を予定します。

 

 

 

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  術後のデンタルXPです。

骨は十分再生されており、インプラントも問題なく植立されています。
 
 
 
 
 
 
 

今日は包括歯科臨床学会2日目です。

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 2日目も朝から夕方まで、“Longevity”というテーマでくくられたいろいろな講演をみっちりと聴きました。

  午後は新潟再生歯学研究会施設長の榎本紘昭先生の「欠損歯列の容態と臨床対応」という基調講演を聴講しました。咬合を再構成するうえで、欠損補綴にさきだって歯列不正や歯周病当の問題を解決しなければならないケースが多いと思われます。榎本先生はこの状態を、“欠損歯列は病んでいる”と表現されていたのが印象的でした。

 

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  歯が欠損している場合、短絡的に欠損部に何か人工の歯を入れておけば済むという問題ではありません。欠損が発生した時点で、すでに残存歯列の歯の並びに狂いが生じており、これを是正して元の問題のなかった頃の歯並びに戻してから欠損部の歯の形態回復を行わないと、狂ったままの歯並びで見かけだけの修復を行っても真の健康的な機能回復は望めません。

 
 このことは日常臨床、特に保険診療の現場でよく見受けられます。歯がないからとりあえずブリッジや部分義歯を入れるのですが、対合する相手方の既にずれた歯並びやいたんだ歯冠形態に合わせて人工の歯の形態を作るので、やはり狂った歯並びやおかしな形態の歯を新たに作り出すだけの結果になるのです。こういった短絡的な無思慮の歯科治療は厳に戒められなければならない、ということをおっしゃっていました。  
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